目次

あれから、季節が2回変わっただけなのに、10年もたったような気がする。思ってもみない筋書きと、信じられない結末だったが、いま思えば、得がたい体験だった。

あの日。
そう、すべては、あの日始まったんだ

I .神社編
I .神社編1 :エロベンチャーのはじまりだ。
I .神社編2 :神社でわっしょい!

II..ツバサ編
II..ツバサ編1:あこがれのセンパイ。
II..ツバサ編2:ツバサのヒミツ。
II..ツバサ編3:ツバサが飛んだ!

III アユ編
III..アユ編1 :地味めの人。
III..アユ編2 :アユの美人論。
III..アユ編3 :二つの顔。

IV.レイカ編
IV.レイカ編1:人形の反乱。
IV.レイカ編2:レイカの本心。
IV.レイカ編3:レイカが濡れた!

V.モモコ編
V.モモコ編1:女優降臨。
V.モモコ編2:モモコさんの恋。
V.モモコ編3:ベテランの底力。

VI..シルビア
VI..シルビア編1:深夜の訪問者。
VI..シルビア編2:女王様の誕生。
VI..シルビア編3:マチコとの再会。

VII..ユミ&マミ編
VII..ユミ&マミ編1:浮気妻選手権。
VII..ユミ&マミ編2:浮気道。
VII..ユミ&マミ編3:ヒトミの秘密兵器。

VIII..ミカ編
VIII..ミカ編1:ヒトミの初恋。
VIII..ミカ編2:天国から地獄。
VIII..ミカ編3:残酷な運命。

IX.タマキ編
IX.タマキ編1:哀しみの未亡人。
IX.タマキ編2:旅ハメの記憶。
IX.タマキ編3:天国の3P。

X.ソフィア編
X.ソフィア編1:遠くから来た女の子。
X.ソフィア編2:二人はちがう。
X.ソフィア編3:わかりあいたい。

XI.サクラコ編
XI.サクラコ編1:チェリーの問題。
XI.サクラコ編2:フクザツな再会。
XI.サクラコ編3:ヒトミの作戦。

XII.最終編
XII.最終編1:ヒトミの卒業式。
XII.最終編2:最終決戦。
XII.最終編3:衝撃の真実。
XII.最終編4:ヒトミ、キレる。
XII.最終編5:グランドフィナーレ。

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XII.最終編5:グランドフィナーレ。

「怒っちゃダメ、ヒトミくん」
ぼくの右手前方の花道(いつのまにそんなもの?)の上に、またひとりあたらしい女の人・・・ツバサさん!

「学校の友達も、先生も、ダミーだったかも知れない。わたしも、その一人かも知れない。でも、ダミーにもこころはあるの、涙も出るの、たたけば痛いの、触れば濡れるの。みんなみんな、ほんとうの真心で、ヒトミくんと付きあってきたのよ」
そうならいいんだけど・・・。真心まで疑っちゃ、いけないのかも知れないな。

「『例の女』の最初の女に、まっ先に手を上げたのは、わたし。ヒトミくんの一番だけは、だれにも譲りたくなかった」
そう言ってもらえると、うれしいです。思いだしダチ、します。

「出会いかたなんて、星の数ある。席が隣になった。相手の定期券を拾った。おなじ刑務所に入っていた。ヒトミくんとわたしは、はじめはたまたま、こんなストーリーの中で出会ったけど、出会いかたが、そうだっただけ、じゃない?そこから先は、わたしたち二人がつくりあげたもの、じゃない?」
ツバサさんに言われると、そんな気がしてきた。ぼくは、ぼくは、ぼくは・・・。

「もう、女の人は、怖くないはずよ」
もう怖くない、どころか、、、好きだ。でも、いちども出してない。←しつこい。

「ヒトミくん、忘れてるみたいだけど、おめでとう」
おめでとう?あったっけ、おめでたいこと、、、あ、そうだ!

「今日はお誕生日でしょ?おめでとう」
そうだ、ぼくの22歳の誕生日、いろいろあったから忘れてた・・・満22歳!

「そう、あなたは自分のちからで、自分の運命を変えたの。もういちど、おめでとう」
ありがとう、でも、ぼく一人のちからじゃないよ。

「もう、いろんなこと、自分でできるはずよ」
ちょっとだけど、ちょっとずつ、だけど。

「わたしが、最初に、教えたの」
教訓①「考えるな、カラダに聞け」
ツバサさん、得意そうに、微笑んだ。ぼくの大好きな、あの顔だ。

「でも、ヒトミくんがしてきたことは、自分のためだけじゃないの」
ツバサさんの隣に、また一人・・・アユ!

「ヒトミくんは、わたしのコンプレックスを、取り去ってくれた」
アユは容姿に、自信がなかった。
でも、ぼくは彼女の、アノときの顔を、とってもきれいだと思った。
悪い方から見ると、だれだってブサイクだ。いい方から見ると、だれだってチャーミングだ。
だったら、いつもいい方から、見ればいい。
教訓②「女の顔は、ひとつじゃない」
「わたしに、生きていく可能性を教えてくれたの」
ありがとう、アユ、でも、そんなたいしたことしてないよ。
ねえ、泣かないで、ぼくも泣くのをがまんするのに、いっぱいいっぱいなんだ。

「そう、ヒトミくんは、わたしの凍っていたこころを、溶かしてくれた」
レイカ!見ないうちに、表情がとてもおだやかになってる。
レイカは、手強かったなぁ、機嫌の悪いアイドルなんて、ちょっとしたウェポンだ。
でも、教訓③「とにかく自分で動くのだ」
困難ほど、正面から当たれ、って教えてくれたのは、レイカだ、ありがとう。

「あなたには、人を癒すチカラがあるのよ、男でも女でも」
お久しぶりです、モモコさん!
「いまはもうそれに、気がついているわね?」
どうなんだろう、自分ではよくわからない・・・。
「返事しなさい!」
「はいっ」
モモコさんの、子供みたいな笑顔。
「さいきん、あたらしい恋をしているの。昨日の夜も、3ラウンド」
よかったですね、3発も!
「ちがうわよ、18×3=54ホール」
ゴルフですか!あと、、、ホールは、下品です。
教訓④「いつだって、いまが、いちばん」
ぼくも、いい恋ができるようにがんばります。モモコさん、ありがとうございました。

「こんにちは、ヒトミくん」
こんにちは、マチコ。今日は、シルビアじゃなくって、マチコだね。
「シルビアは、やめちゃったの、でも、女王様はたまにやってる。男の人が憎いって思わなくなったから、いまは、愛のムチ、むしろ本気、だけどね。こっちのほうが痛いよー、ためしてみる?」
遠慮しとくよ、でも、明るくなったね、うれしいよ。
教訓⑤「すべてを肯定してみよう」
これからもがんばろうぜ、マチコ、おたがいに。

「ヒトミくん、わたしたち覚えてるぅ~?」
ユミさんとマミさん、忘れるわけないじゃないですか。
「元気に浮気してしてますか?」、、、へんな質問。
「それがねー、もうすぐ浮気妻選手権の世界大会だから、その準備で浮気してるヒマなくて」
と、ユミさん。難しいもんなんですね。
「ヒトミくんも、早く彼女つくってね」
と、マミさん。ありがとう。努力します。
「そうしたら、ヒトミくんも浮気できるよ」
そういう意味なんですか。
「ヒトミくん、ファンタジスタやカエルさんに、頼ってばかりじゃダメよ」
耳が痛いです。
教訓⑥「人に頼るな」
「だから、ファンタジスタ、わたしにちょうだい!」
「わたし、カエルさん!」
、、、あげませんよ。

「・・・ヒトミくん」
・・・ミカ。
「・・・かくしてた・・・わたし・・・ごめんなさい」
もう、怒ってない、わかった、ほんとうにわかったよ。
「あん、なに、あんな、に、好き、だったのに、好きだっ、たのに・・・」
ミカ、もう泣かないで、好きな人にかくしごとをしなくちゃいけない、って、つらいよね、それがその人のためだって、せつないよね。
ぼくが、ミカだったら、きっと、そうだ。
「・・・好きだった」
知ってるよ、だからもう、だいじょうぶ。
みんなの愛情で、友情で、見えないところで献身的に支えてくれた、たくさんのだれかのおかげで、ぼくはすこしだけ、やさしくなれた、泣かなくなった、きっと、それは、成長ってことだろう。
ぜんぶ、すこしだけだけど、でも、明らかにちがう。
ぼくのこころの中には、みんなへの感謝しかない。
おかあさんの病院がにせものでも、ぼくの高校がつくりものでも、そんなことは、それだけのこと。
だって、みんな、ここにいるじゃないか!だから、ミカ、もう泣かないで。
「ミカは、ひとつだけ大きな間違いをしている」
ミカが、泣くのをやめて、ぼくを見つめている。
「好きだった、って、過去形じゃないでしょ?」
ミカは、笑顔が涙でぐしゃぐしゃだ。
「ミカ、また、いつか、会えるよね」
教訓⑦「永遠なんて、ない」
でも、未来は、ある。
ミカは、微笑んだ。そして、うなずいた。

「その節は、お世話になりました」
タマキさん、その後、いい出会いはありましたか?
教訓⑧「思い出は多いほうがいい」、増えました?
「好きな人ができたんだけど、ふられちゃった」
どうしてですか?
「彼、亡夫との3Pを嫌がったの」
そりゃふつう、よろこびませんよー。
「でも、わたし、もうだいじょうぶみたい。ヒトミくんが、前に向かって生きることを、思い出させてくれた。忘れられない、まいにちにする。ほんとうに、ありがとう」
こちらこそです、ありがとうございました。

「ヒトミ、すてきナ、パーティーね」
ソフィア!わざわざ来てくれたんだ、遠いところ、ありがとう。
ソフィアには、とってもたいせつなことを、教えてもらったんだ。
教訓⑨「人はちがう、だからわかりあいたい」
「ワタシ、もっと、ニホンのウタマルとわかりあいタイ。ヒトミとも、もう2,3パツ、わかりあいタイ」
、、、あのね、それじゃ、わかりあう=スルって意味でしょ?
せっかく、たいせつなことって、言ったのに、それと、なんども言うけど、(誤)ウタマル→(正)ウタマロ、だからね。アンダスタン?
ソフィアは、いたずらっぽく笑っているけれど。

「わたしのはじめての男性、こんにちは」
そう言われると、照れくさいよ、サクラコ。
「ヒトミくんに、文句を言いに来たの」
なに、こんどは真逆にいきなり。
「あれからわたし、だれともエッチしてないの。自分でも、してないの。現実でするより、想像のほうが気持ちよくなっちゃったの」
教訓⑩「想像力には、チカラがある」
「触らなくても、イッちゃうの。こういうのどう思う?これって、女の幸せ?」
、、、あ、それ、ちょっと、わからないな。。。
「責任とってよ、ヒトミくん」
いいよ、サクラコの想像の中でね。
「冗談、はじめてが、ヒトミくんでよかった、感謝してます」
感謝するのは、ぼくのほう、ありがとうサクラコ。また、手をつないで、家に帰ろうな。

「、ってことなんだけど・・・黙ってたのは、悪かったと思う、でも」
「もういいよ、わかったよ、おとうさん」
おとうさん、って、やっと言えた。

ぼくは、ぼくは、ぼくは、ずっと、ずっと、ずっと会いたかったんだよ、おとうさん。
おとうさん!おとうさん!おとうさん!おとうさん!おとうさん!おとうさん!
なんどでも呼びたい、おとうさん!でもほんとは、おかあさん。。。
でもいいんだ、そのほうが、いいんだ。
おとうさん&おかあさん。おかあさん&おとうさん。そして、ぼくの大好きなおかあさん。
ほら、5人いる!ふつう、おとうさんとおかあさん、ふたりしかいないのに。2.5倍!きっと、愛情も、2.5倍。ありがとう、ぼくは幸せです。

「おとうさん、素朴な質問なんだけど」
「いいよ、なに?」
「さっき、お金もかかっちゃうし、って言ってたでしょ、どのくらい?」
「ヒトミは気にしなくていいよ」
「教えてよ、参考にするから」なんの参考だ?
「200億くらい、おこづかいなくなっちゃった」
2、2、2、200億!
「バイトしなきゃ」
どんなバイト?

「そんなことより、それで、オマエ、どうする?」
「どうする、って?」
「わたしたちは、オマエに、男として生きろ、と言ってるんじゃないよ。男でも女でも、どっちでもいい、ただ、自分の意思で、選んで欲しい。わたしたちは、そうじゃなかったから」
「ありがとう、わかりました。でも、もうちょっと、時間もらっていいかな、まだ混乱してるから」
「OK,もちろん、じっくり考えろ」
ありがとう、ほんとにありがとう、おとうさん。

「ヒトミ、元気でな、また会おう」
おとうさんも、お元気で。

「ヒトミ、また、会ってくれるよね」
あたりまえじゃない、おかあさん。ぼくら、家族だよ。

「恋せよ!愛せよ!生きろ!ヒトミ!」
おとうさんのその叫びとともに、すべての照明が落ちた。

そして数10秒後、おだやかな暖色の光が、ホールに満ちた。
映画やコンサートが終わったあと、「これをもちまして、レッド ホット チリペッパーズ 東京公演はすべて終了いたしました」、ってときの、照明だ。

あ、おかあさん!いつもの、やさしい笑顔。
「おかあさん、なにか食べに行こうよ。ぼく、おなかすいたよ」

SEE YOU AGAIN

~ 完 ~

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XII.最終編4:ヒトミ、キレる。

「つまり」
おとうさん(仮)が、晩ごはんのメニューを、明かすように言った。

「そう、わたしがほんとのおかあさん」
そして、「わたしがほんとは、おとうさん」

、、、あたマがこワれますタでス。

おかあさん→育てのおかあさん
ほんとのおかあさん→おとうさん
おとうさん→ほんとのほんとのおかあさん

「まあ、気にするなって」
気にする、する、するよーーー。

「だからね、こんなややこしいことは、自分の代で終わりにしようって、決めたんだ。ヒロミは、ちょっと、間にあわなかったけどね」

「わたしはこれで、幸せよ」
ヒロミ、、、兄さん。。。

「ヒトミからは、なんとかしなきゃなって、思ったんだ」
ありがとうございます、かな?

「中学生の頃までは、まだそんなにあせってはいなかった。ヒトミは、まいにちちゃんとオナニーできるいい子だったからね」
(赤面)見てたんですか?

「ところが、中3の秋くらいかな、ヒトミが急に女の子たちに、距離を置きはじめた。思春期って、そういうもんだけど、なにぶん宿命が宿命、とくにわたしたちは異性にオクテなんだよなー。だからしっかりウォッチしておかなきゃ、って、大急ぎで高校をつくった」
つくったぁ?

「高校創立って、たいへんなんだよね、しかも半年で、お金もかかっちゃうし」
ぼくの通ってた桃高は新設校で、ぼくは、願書も出してないのに、いきなり推薦合格しちゃったんだ。・・・そういうカラクリがあったとは・・・。

「まずは男らしくと、サッカー部に入らせて」
サッカーなんて興味なかったけど、「いいから入ろうぜ」って、イシダが言ったから・・・イシダ?

「なんとか性に関心を持たせようと、世界各国オールジャンルのエロ本読ませたり」
まいにち、コウノが見せに来てた。・・・コウノ。。。

「でも、オクテの血には、逆らえず、いまひとつ効果がない。だから、オマエを海外に行かせて時間かせぎをして」
(大学なんかつまらないぜ)、、、トモハラがぼくに言ってた。
(海外で武者修行なんて、いいんじゃないかな)、、、オオシマ先生!

「いろいろと準備を、整えたのだ」
「じゃ、学校のみんなは・・・」
「ほぼ、エキストラ、って言うか、ダミー、かな」
、、、ダミーの、友達、、、だみーの、先生。。。

「そして、このストーリーを思いついたのだ。我ながら、ナイスプランニング!だよね?」
隣の、おかあさん(仮)と、満足げに笑いあってる。

このストーリーって、「例の女」のことか?友達って、なんだ?なにがほんとで、なにがうそだ?
なにから、どう、質問していいかわからない。過去も未来も、もう信じられない。
たしかだと思ってた過去も、そうじゃなく、ただでさえあいまいだった未来は、まったく見えなくなってしまった。

たぶんすべて、ぼくのためだ、たぶん。そのすばらしいストーリーを、ぼくだけが聞かされていなかった、それだけのことだ。
善意と思いやりのパーティーの、すてきなプレゼント。
その前に、目隠しされてぼくがつれてこられた。それだけのことだ。

「フザっ、フザっ、フザケルナー!!!!!!」

生まれはじめて、こんな大声を出した。のどが口から飛び出るか、と思った。

おとうさん(仮)は、おかあさん(仮)の後ろに、隠れた。
ブドーカンは、完全に沈黙した。みんな、心臓の鼓動まで、止めているかのようだった。 
 
 
つづく

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XII.最終編3:衝撃の真実。

死闘と呼ぶんだろうか、たいした修羅場も踏んでないぼくにはわからない。
でも、さすが、12人の最後に登場するだけのことはある。

全身に力が入らない。
トライアスロンでゴールしたあとに、オナニーするくらい疲れている。
もちろん、トライアスロンなんて、やったこともない。ぼくのイメージで「めちゃすごく」を言い換えたに過ぎない。
ただ疲れが、どぼどぼとカラダからこぼれている。

おなかすいたなあ、お寿司食べそこねちゃったなあ。
大好き1位ねぎとろ、2位カニサラダ軍艦、3位のタマゴ焼き、4位の・・・と考えながら、服を着ていると、グ~っておなかが鳴った。

「・・・ヒトミ」
元オネーサンが目を開けた。

おなかのグ~で起こしちゃったかな、ごめんなさい。それにしてもだいじょうぶかな?めちゃすごく(トライアスロンで、以下略)苦しそうだ。

友情か、もしかしたらそれ以上のものが、胸をよぎる。
ふしぎだな。この人せいで散々な目にあってきたのに、すべてを許せている自分がいる。

今日はふしぎな感覚デーだ、いや夜だからふしぎな感覚ナイトだ、って完璧にどっちでもいい。たぶんこういうの、愛憎って言うんだ。火曜サスペンスで見たことがある。

「・・・おめでとう」
スタンプカード!最後のひとつが、あざやかな朱色で押されている。

やったあああああああーーーーーーーーーあ!スタンプが12個、ついについについに!
あれ、元オネーサン、これまで見せたことがないような、慈愛に満ちた笑顔。

「大きくなったね、ヒトミ」
大きくなった?ピエールのこと?←まっ先に、こう考えるクセがついている。

「わたしの、誇り」
わたしの?誇り?ぼくは、元オネーサンのもの?

こればかりはいつものように、ぼくの疑問にはもちろん答えないで、満足したようにゆっくり目を閉じた。
それにあわせるように、天井の照明がおちた。
再び、暗闇のブドーカン。

いきなりはじまるピアノ曲のイントロ・・・これは「冬のソナタ」?
いったい、なにがはじまるのだ?
しばらく続く音楽、「あれ」とは微妙にちがう。。。たぶん著作権の関係で、似せてつくった曲だ。そんなことどうでもいい。

そして、ぼくの10メートルくらい先に、天井からのピンスポットライト。
その中に姿を現した、一人の・・・一人の・・・やったやったやったやったぁーー、
「おかあさん!」

「元どおり、元気になったんだね、もうケガは、だいじょうぶなんだね、またいっしょに暮らせるんだね、ぼく、ぼく、ぼく・・・(涙)」
おかあさんは、事故の前とおなじ、やさしい笑顔でうなずいている。

「どこの悪魔さんかなんか知らないけど、あの約束、いまこの瞬間まで、半信半疑だった。ありがとう。約束守ってくれて、ありがとう」
ぼくは、暗闇の中めがけて、声を張りあげた。
そして、エンディングが、はじまった。

「その人は、最初からケガなどしておらーん」
太い男の声が、ホールにこだました。

ぷぁぱっぱらぱぱっぱぱぱぱらっぱらぱっぱらっぱぱっぱらぱっぱっぷぁっぱーーー。
もったいぶったファンファーレが、鳴り響く。
これまでの人には、電気代ケチっててごめんねー、ってくらいのあふれる光の中、紋付はかまのオジサンが、ステージの上に現れた。

「クルマにはねられてもいないし、入院もしていない」
じゃ、あの、面会謝絶の部屋は、なんだったんだ?

「そもそも、あの病院自体、存在していない」
えっ、それどういうこと?否定形の多いオジサンだな。

「しかもその人は、オマエのおかあさんではない!」

なんだ、このオヤジ、わけがわからない、この人がぼくのおかあさんじゃなければ、なんなんだ?
このバカオヤジ!って、ふとおかあさんを見ると、しくしく泣いている、肯定するように。
どうしたの、おかあさん、ちがうって言ってよ。

「あと、男はやたらと泣いちゃダメだ」
、、、すみません、気をつけます、でもなんで知らないオジサンから説教・・・@深夜のブドーカン。

「さらに、わたしは悪魔さんではなーい」
じゃだれ?だれでもいいけど。

「オマエの父だ」
チチって、どっちの乳だよ(←まっ先にこう考えるクセリターンズ)って、チチ、ちち、父ィーーーーー?!おとうさん。。。

そして、「わたしが、おかあさんよ」。オジサンの隣の女の人は、泣いている。
おかあさん(復活)と、おとうさん(主張)と、おかあさん(主張)。
なにがなにやら。

「ある重大な事情があって、わたしたちは、オマエと別れなければならなかった。ヒトミ2歳のとき」
2歳・・・あの子供?フレディから伝わってきた、あの映像の中のぼく?

「わたしたちは、たいせつなオマエを、そこにいる女性に託した」
おかあさんを、指差してる。あの映像の中のおかあさん・・・覚悟をきめた顔をしていた。

「つまりこの二人の女性は、生みの親と、育ての親。ふつうの人の2倍だぞ、ツイてるな、ヒトミ」
ぼくは、気になることを質問してみた。
「あの別れのシーンにいた、ぼく以外のもう一人の男の子は、だれですか?」
「それは、ヒロミ。オマエが『神社のオネーサン』と呼んでいた人だ」

またあたらしい、ピンスポットライト。
その光の中には、もちろん神社のオネーサン。

「そして、オマエの実の兄だ」

なにいいいいいいいいぃーー兄アニあにいいいいいいいいいぃーーーーーぃーぃーぃー!

オネーサン→オニーサン、にっこりウインクして、
「ヒトミ、気持ちよかったよ、また遊ぼうね」
遊ばない遊ばない。
、、、、、脳が、ミートソースになった感じ、しかも缶詰の。なにがなにやらわかりません。

まだ無邪気に、おとうさん、とは呼べないから→おとうさん(仮)が、2歳のぼくを手放すこととなった「重大な事情」を語りはじめた。

姉小路家は、平安時代から続く名家で、おとうさん(仮)で、35代目になる。しかしその家系には、これまた平安時代から続く大問題があって、満22歳になると性の転換が起きるのだ。つまり、男は女に、女は男に。なんの前ぶれもなく、突然、断りもなく、うむを言わせず、例外なく。

「まあ、自分が納得すりゃ、どっちでもいいんだよ、男でも女でも。私のときは、気にならなかったし、むしろ2倍楽しいし」おとうさん(仮)、ライトににこにこ笑っている。
しょうゆラーメン頼んだのに、塩ラーメンが出て来た、くらいライトな感じ、って、ヒトミくん、たとえ話考えている場合ではない。

そうなのかな、そうなんだろうな、そうならいいけどな、ぼくもそうなっちゃうのかな。

「だから、うちの家族は、みんな、男女どちらでも使える名前になっている」
ヒトミ、ヒロミ、おとうさん(仮)、「わたしは、カオル」、おかあさん(仮)、「わたしは、マサミ」。

「でも、難関は結婚。家系を絶やすわけにはいかないし、そうなると、子供もつくらなきゃならない。名家だけに、ばかばかしい世間体もある。男から女に変わったら、そんじゃ相手は男ねー、ってわけにはいかない。男と男じゃ、子供がつくれない」
なるほど。

「とは言え、女になったら、女の人と結婚するとヘンだろう?だから相手は、やっぱり同じように、男女が入れかわる人じゃなければならない。そんな家系が、日本中にかろうじて17家残っている。その中で、なんとか、結婚したい人を見つけなければならない、無理にでも、妥協しても、好みじゃなくっても、年が離れていても。サンプル数が少ないからねー、なかなか思うようにはねー」
たしかに、たいへんそうだ。

「ま、わたしとおかあさんは、運命のエンドレスラブだけどね」と言って、ぶちゅううう、と、おとうさん(仮)とおかあさん(仮)、DEEP<DEEPER<DEEPESTキス。

仲いいんですね、なによりです、お好きなように、はいはい。。。おい、ちょっと待てよ、、、満22歳で男女入れかわるんですよね、入れかわった同士結ばれるんですよね・・・
 
 
つづく

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XII.最終編2:最終決戦。

「踏んだ修羅場が、男をつよくする」
わかります。お手元のフレディも、たしかに修羅場っぽいですね。

「わかりました。お相手いたします」
ぼくは、服をいっきにぜんぶ脱いだ。畳の上に正座して、ていねいにたたんだ。
そうしないと、おかあさんに怒られるんだ。

そして、立ち上がり、、、立ち上がり、、、ぼく本体は立ち上がったのですが、ピエールが、、、。
ピエールが、38%(当社比)。
完全に、フレデリック14世に、のまれている。
しかしです、ぼくもひるんでいます、14世さん。ピエールも、結構なものなんですよー。
みんな大きいって言ってくれるんですよー(ほんと)。
自慢じゃないですよー(うそ)。
なのに、フレディは、ピエール絶好調時の、150%大。

(カーーーン)
ココロのゴング。
ここがオマエたちのリングだとばかりに、天井のスポットライトが、二人を照らしている。
まさかブドーカンで、戦うことになるなんて、しかも全裸、相手仁王立ち、ぼく棒立ち。

元オネーサンは、下半身にタックルに来るように、低く身構えている。
獲物(ぼくです)を狙う野獣。女性らしい? のびやかなカラダには、余計な脂肪がいっさいない。
猫科だな、この野獣。さらに、その下に一匹の野獣。
フレディは、もう、コチコチキンキンビンビンで、オレはオレの獲物取りに行くよ、って感じで、こっちもスタンバってる、ってその獲物も、ぼく。

こちらはというと・・・あれ、ピエールどこ?どこ?。
へなちょこ犬(ぼくみたいな←自虐←得意)がしっぽを巻くように、股のあいだに隠れている。まあわかるよ、だって、この状況でタツ理由がない。
いいや、むしろそうしててくれ、オネーサンがつかみにくくて、ちょうどいい。

ぼくはどうしていいかわからないので、とりあえず元オネーサンをまねて、相手の下半身を取りに行くポーズをして、真剣な表情をつくってはみたものの、男性の下半身を狙う動機もない。

にらみ合ううちに、1時間も経っただろうか?タッただろうか?
・・・ぼくらの影が、伸びている(わけがない)。
眠い。真夜中だ。
ぼくのあくびを待っていたかのように、ぼくに飛びかかる、元オネーサン。

ぼくは、かろうじて身をかわしたのだが、足元をフレディにすくわれて、コケル。
コイツ、目があって自分で動いているかのようだ。我がチームに欲しい。

すぐに立ち上がったものの、カラダが傾いて、隠れていたピエールがコンニチハしたところを、ムギュっっつ!
つかまれた。同時に、フレディがぼくに襲いかかって来て、やめてーーっ、とばかりに手を出したら、あらららら、すっぽり手の中に入っちゃった。

ブドーカンの真ん中で、組み合うように対面する二人。
相撲でいうところの、がっぷり四つ。右の半身。
違うのは、つかんでいるのが、まわしではなく、おたがいのアレってこと、くらい、ってくらいか?

元オネーサンは、ピエールをムンギューーーっ、と握りしめている。
もう、離さへんでぇー、って感じである。

ぼくもフレディを握りしめている、つもりが、デカすぎて。。。
ソーセージが太すぎてバランスの悪いホットドッグ、って感じである。

その態勢のまま、さらに1時間も過ぎただろうか。
二人の影がまた長くなった(ならないって)

ああ、パーティー、はじまってるんだろうな。もうお寿司なんか、残ってないよな。
から揚げもさめてるし、ピザも硬くなっちゃってるし・・・。
(←ヒトミの考えるパーティメニュー。寿司、から揚げ、ピザ)

そんなこと思いながら、同時に、感じている、なんだろう、なつかしいと言うか、ほっとすると言うか、この状態でほっとするのもどうかと思うのだが、ふしぎな感覚。

そのときだ。急に頭の中にセピアな映像が浮かんできた。
子供が泣いている。ぼくだ! まだ小さい、2歳くらいかな。泣きわめいている。
なにかを、だれがを追いかけようとするんだけど、隣の女の人が、ぼくを抱きしめている。

若いころのおかあさん? いつものやさしい笑顔じゃない。
あえて言うなら、決意したような、覚悟したような、そんな顔。
二人の視線の先には、見覚えのない男女と、ぼくより二つくらい年上かな、の子供。
こっちの女の人は、涙だ。その人を、隣の男の人がなぐさめている。子供も大声で何かを叫びながら、泣いている。音声はないんだけど、口の動きを見ると・・・ヒ、ト、ミ。

ヒトミ?
どういうこと? キミ、だれ? これ、なに?
この映像も妙な感覚も、フレディから、やって来る。
つまり、元オネーサンから、やって来る。なんだなんだなんなんだ?

「元オネーサン、これは、いったい、いい、い、い、い、気持ちいいです」
思ってたことと違うこと、言っちゃった。

そうなんだ、気持ちいい、まいった、どうしよ、オネーサンは男なのに、そうか、目をつぶれば気にならないか、って、ほんとに目を閉じるなよ&うっとり目をあけるなよ、ヒトミ!

「女性の手が、一生のうちにコレを触る回数なんて、たかが知れている。わたしの手は、男の手。一日3回コレを触るとしても、3×365×23。つまりわたしの手は、男を知り尽くしている計算になる」なるほど、どおりで。
あと、元オネーサン、23歳だったのね。どうでもいいが。
でも、いいこと聞いた。男の手なら、ぼくも持っている。

ぼくは、自分でするときは、左手でする。右手だと、すぐにイッちゃうから。すぐイッちゃうタイプではないんだけど、ぼくの右手が、すさまじく優秀だということ。
大事なこと忘れてた、封印してたんだ。すごいよ。

とにかく、この勝負からは、逃げるわけにはいかない。
つぎはこっちの番だ。
男の人のアレだと思うと、ちょっとひくが、自分のアレだと、思えばよい。
瞬間主観チェンジ@ヒトミ。
久しぶりの右手だなぁ。思うぞんぶん、暴れて来い。
アウェーだけど。

小指、薬指、中指、人差し指、親指と、順番に動かす。いろっぽい女の人が、こっちイラッシャーイ、ってするときの指ね。
ぼくがそのスピードをマックスにすると、5本の指が1000本に見えるほどだ。その1000本が、フレディにからみつくのだ。どうだ。
フレディは、逃げられない、逃がさない。

これぞ、「秘儀、千手観音」(いま名づけた)。元オネーサンは、驚きに、目を見開いている。
どうせぼくが泣き言でも吐くと、思ってたんだろう。
ぼくはもう逃げない!

おつぎは、「肉球攻め」ぼくの右の手のひらの、指の付け根に汗をかかせると、まるでぷにぷにした肉球という感触になるんだ。
それをフレディに、ぺたぺたぺったんこ、としてやるのだ。
張りついては離れる感触、やわらかいのに十分な弾力、そしてなによりも、猫に触られているみたいな、メルヘンドリーム。
ぺたぺたぺったんこ、ぺたぺたぺったんこ、元オネーサン、目がうつろになってきた。
さて、そろそろ終わりにしようか。

フレディの根元を手で絞めて、血を止める。
元オネーサン、「これは!」
そう、これは、神社で元オネーサンにされた、というかしてもらった
(気持ちよかったなぁ)の、手バージョン、
「血液バキュームインスパイア」だ(いま名づけた)。

しかも、ただ握り締めているのではない。内部の毛細血管だけを締めて、フレディ本体には、影響を与えない。だから、痛さや圧迫感は、いっさいないのだ。
しかし、血だけは確実に止まっている。ほら、フレディが青ざめてきた。

「元オネーサン、3つ数えるよ」
元オネーサンの顔も、フレディと同じくらい青ざめている。
「3」
元オネーサンの顔が、恐怖で引きつっている。
「2」
・・・ここまで、長かった。
「1」
いま、エンディングのとき!

ぼくがフレディを握りしめる手を緩めると、元オネーサンの全身の血が、フレディめがけて殺到する。

どどどどっどどどどどどど。
隣の町まで音が聞こえるほどだ(イメージ)。
ダイナミックにして、毛細血管レベルからわきあがってくる快感。マクロとミクロが織りなす、絶妙のコンビネーション。
元オネーサンがヒザから崩れ落ちる様子を、ぼくはスローモーションのように見た。
これじゃまだ、終わらない、終わらせない。
床にヒザをつくと同時に上がる、悲鳴。

いや、悲鳴じゃない、歓喜の叫びだ。
ぼくは手で攻撃を加えながら、ちょうど元オネーサンのお尻の下に、ファンタジスタを配しておいたのだ。
そして、崩れ落ちる元オネーサン、そのお尻に、ファンタジスタ、チェックイン!
そう、これは、元オネーサンが演出した、ミカの結末。
このフィニッシュは、ミカからのプレゼントだ。

元オネーサンは、それでも、10秒ガマンした。
そして、イッた。出た。飛ばした。

ぼくの足に、ちょっとかかった。

つづく

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XII.最終編1:ヒトミの卒業式。

そう、ぼくはいま、「卒業パーティー」に向かっている。
「午前0時スタート」と、招待状には書かれている。
ずいぶん遅いスタートだ。

「準備の都合があるので、30分前には会場に来てください」
なにを準備?卒業生からのスピーチとか、あるのかな?
「卒業できればの話ですけどね」

ぜったい卒業してみせる。そして、おかあさんを、元どおりにしてみせる!って、そもそもぼくは、どこにいつ入学したんだろ?
とにかく、同封の地図を頼りに、会場へ向かう。

指示通り、30分前。九段下から坂を上って、
「たぶん、このあたりのはず・・・」
ふと、ぼくの視界を埋めつくす建造物・・・ブドーカン?ブドーカン!

「ヒトミくん卒業パーティーは、こちら→」の張り紙。
やっぱり、ここだ。ほかにだれか出席するのかな?

関係者入り口のドアを開けて、月明かりを頼りに、廊下を歩く。
やがて、ホールの入り口へ。そーっとドアを開けてみると、ありゃ、ここも真っ暗だ、どこでどうすりゃいいんだろ?

そのときだ!
一面に畳が敷きつめられた、広いホールの真ん中に、ピンスポットライト。
よく見ると、神社のオネーサン!
「招待状は、届いたようね」

天井からのライトで、顔に、しまの陰影ができて、歌舞伎のくまどりみたい。
つまり、コワいです、いつもより。

「卒業パーティーは、あとのお楽しみ。まずは卒業試験に、パスしなきゃね」
準備って、その30分、か。

オネーサンは、スタンプカードを投げてよこした。
このオネーサンと、深夜の神社で会ったときから、この冒険ははじまった。
スタンプカードを見ると、はじめのころ、ツバサさんやアユのころのハンコは、色があせてしまっている。

長い旅だった。11個のスタンプひとつひとつが、ぼくが生きてきた証だ。
いろいろな女性がいた・・・みんな、喜びも悲しみも悩みも夢も抱えて、生きていた。
その、ひとつひとつと向き合うことで、ぼくはつよくなれたような気がする・・・。

「あのね、ヒトミくん、そんなうっとりした顔で、感動のグランドフィナーレをセルフ演出してる場合じゃないよ」
、、、すみません。

「あと、思い出しダチ、してるよ、キミのピエールくん」
ピエールって名前つけてくれたのも、オネーサンだ。

「キミ、やり残していることが、あるでしょ?」
「そういえば、いちどもイッてないしなぁ」
「そんなことじゃなくって」
「わかってますよ、もちろん」ああ、わかってるさ。

スタンプカードに、ただひとつの空欄・・・。
「だれですか、最後の一人は?」

オネーサン、さっきにも増して、妖気大盛で、
「目の前にいるじゃないの」
えっ?

「わたしじゃ、ご不満かしら?」
来たね。
「わたしアゲイン。わたしリローデッド。わたし大好評につき、キャンペーン再び!」

、、、大好評ではないですが、そうそう、神社では、あやうくイキそうになっちゃったんだ、♪まあるい緑の山手線、を思い出さなければ。でも、あれからぼくも、成長している。はず。

「ぼくも、もういちどくらいならシテもいいなって、思ってたところです」
「ウンッモー、ジョートー言えるようになったねー。不愉快!」
あわわわ、、、怒った?

「とにかく、ここまでは、よく来れた。でも、卒業パーティーは、きっと中止になるわ!」
ほんとに怒ってる、指ポキポキやってる、帰ろかな。。。

「&キミ、招待状を、ちゃんと読んで来なかったようね」
なんだろ?

「正装、って書いてあったはずだけど」
今日のぼくは、一着しかない黒いスーツに白いシャツ。
精一杯なんだけど、これ・・・あ、ネクタイか。

「このあいだ友達にネクタイを貸して、まだ返してもらってないんです」
オネーサン「そんなこと言ってるんじゃなぁーい!」
今日はやたらと怒りっぽいなぁ。

ぼく、「ごめんなさい、でもこんなのしか、持ってないんです」
「持ってるはずよ」
ぼくが、正装の服を?

「どんな高価なものでも、豪華なものでも、服など、しょせん虚飾。そんなもので人の目をあざむくよりも、ありのままの自分のすべてを、さらけだす。それが、男の生きる道。ならば、これ!ハダカこそが、男の正装!!!」

オネーサン、いきなりいっきに、着ていた服を脱ぎ捨てた、見事に男らしく、、、って・・・・・・エッ・えっ・エッ・ええエええエぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
うわっうわっうわっ、、、、、、、、、つい、て、るん、です、が、ぼく、と、おなじ、モノ。。。

「さあ、立ち上がれ、フレデリック14世!」
、って、あのーソレのことですか?っていうか、もう立ち上がってるし。
でも、ぼくのには、ピエールってのんきな名前(ごめん、ピエール)つけといて、ご自分のには、フレデリック14世(以後、フレディとする。フレチンも、可)ですか、あーそーですか、いいお名前ですね←いじけている。

オネーサンのきれいな顔の、数10センチ下で、ドッカンズッカンそびえている物体。。。シンプルにフクザツ。このオネーサン、というか、オニーサン、もー、フクザツ(以後、元オネーサンとする。オネチンも、可)いったい、なに者?

「ヒトミィっ!」
仁王立ちする(本体も、オトモダチも)その様子は、まさしく阿修羅だ。美しく、気高く、そして、まぎれもなく男。

「ちょっと聞くが、コレ(フレディ)ついてたら男か?」
こっちが聞きたい。それついてたら、男ということになってるんじゃないのか?

「カラダが男で、ココロが女だったら、男か?」
それは難しいなあ。

「ニワトリが先か、卵が先か?」
それは難しくない。完璧に、どっちでもいい。

「アレのことは、明記を避けて、ち〇ち〇と書くべきなのか?」
、、、たぶん。

「〇ン〇ンでもいいのか?」
カタカナになってるけど、たぶん。

「18歳未満は、セックスしちゃイケナイのか?」
個人的には、べつにいいと思うけど。でもやっぱり、モテるやつうらやましいから禁止。

「80歳以上は、セックスするとヘンなのか?」
人それぞれ、じゃないかなあ。

「イチロウが、区役所の戸籍係だったら、どうなのか?マイケル・ジョーダンが最初にプロになったのがバスケットボールじゃなくて、野球だったらどうなってたのか?みのさんがNHKのアナウンサーだったら、どうなってたのか?」
元オネーサン、もうぼくの答えを、求めていない。自分で自分に、問いかけているようだ。

「人には、人それぞれの場所がある。いちばんの場所がある。たいせつなのは、探すこと。そして自分で、選ぶこと」

なんかよくわからないけど、よくわかる。
ぼくは、考えこんでしまった。求めなくても、与えられたもので生きてきた。その場所が自分の場所なのか、自分にとっていちばんなのかを疑いもしないで、生きてきた。
でもさいきんは、そうじゃない。

ぼくは、なんなんだ、誰なんだ?
ぼくは、なにができて、なにができないんだ?ぼくはどこから来て、どこへ行くんだ?
知りたい知りたい知りたい。

「あなたは、それを見つけるために、ここにいるの」
そうだといいな。

でも元オネーサン、いったいなにを語らんとしているのだろう?
(実は、その発言の中に、ぼくの最大のヒミツが隠されていた。ぼくはまだこのとき、それを知るよしもなかったのである)

つづく

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XI.サクラコ編3:ヒトミの作戦。

だいじょうぶ。ぼくがなんとかする。
考えてみよう。ポクポクポクポク(それは、一休さん)。
濡れてはいるのだ、いまのところきっかけは、そこにしかない。
(ということは・・・ははーん)
おともだちに協力してもらおう。

リュックの中をがさごそやって、カエルさん登場。
浮気妻相手に(第7話)あわやのぼくを、救ってくれたカエルさん。
彼はアソコの中の水分を吸って、濡れる→吸う→大きくなって刺激する→さらに濡れる→さらに吸う→さらに大きくなって刺激する、というとんでもない無限ループを実現するカエルさんなのだが、今回のケースでは、中へ入ることはできない。

じゃ、どうするか?いい?ちょっと見てて(←アメリカの料理番組ふう)。
サクラコのアソコの、わずかに開いたすきまに、カエルさんの前脚を差しこむ。
そのくらいなら、痛みもないし。
それで、水分吸って大きくなるのを待つかって?NOだね(←アメリカの通販番組ふう)。

前脚を無事イレ終えたら、またリュックの中をがさごそやって、ファンタジスタを取り出した。
そしてカエルさんに、ファンタジスタを抱えこませるように、セットする。
で、スイッチを入れる。するとファンタジスタの動きが、カエルさんのボディを経由して、前脚からサクラコのアソコに伝わるという
「手に手をとって希望をつなげよう大作戦」である。

ヒトミ、アッタマいいいー。
問題があるとすれば、そのセッティングに時間がかかって、サクラコが眠ってしまったということだけだ。
作業は順調に進行しているようだ。カエルさんの、前脚が大きくなっていくのでわかる。

ファンタジスタとカエルさんは、リトルリーグからのバッテリーのように、実に息のあったプレーを見せてくれる。
ぼくはといえば、サクラコの手を握りながら「痛くない?」って聞いてるだけ。
まるで出産に立ち会った夫。そして、カエルさんがぼくに目配せ(ふう)。

濡れた水分を吸収して、すでに彼の前脚は、直径3センチを超えようとしている。
ぼくの出番だ、って、なんにもしてないやん。

ともかく、直径3センチにピエールを調整する(小さかったら、Hなことを考えて、大きくなりすぎていたら、男ばかりの工場の昼の休み時間を、想像したりするのだ)。
ここからの、ぼくの動きは敏速だった。

カエルさんをクイックに引き抜いて、カエルさんの前脚とクイックな握手をかわし(GOOD JOB!)、せっかく開いたところが閉じようとしないうちに、クイックにイン。
入った。
サクラコがぼくを見て、うっすら涙ぐんでる。

サクラコのはじめての男になれた!って、でも、もしかしたら、はじめてはカエルさん?
ところがそこで、あらたな問題。やっぱり、動くと激しく痛いらしい。
ちょっと動く。ぎゃっ。
ちょっと動く。うげー。
ちょっと動く。ぐきゅーん。。。
どうする?

ヒントは、第二話でツバサさんが言ってくれた、
「セックスは、コミュニケーション」
中学生のサクラコは、ココロとカラダ、8対2で感じたって、言ってた。
できるかもしれない。

ぼくとサクラコは、じっと見つめ合っている(イレたまま)。
ぼくは静かに、話し始める(イレたまま)。
「サクラコはセックスしたのが、うれしかったのかな?ぼくとこんなにくっつけたのが、うれしかったのかな?」
サクラコは、じっと聞いている(イレたまま)。

「ぼくは、セックスはとっても大切なものだと思う。ここしばらくの体験で、はじめてわかった。でも、セックスが大切なのは、人と人がこんなにそばにいられるから。鼓動や体温や吐息を、ダイレクトに交換できるから。気持ちよくなろう、気持ちよくしてあげよう、って、ココロをひとつにできるから。ぼくの、はじめての人が教えてくれたんだ。セックスはコミュニケーション。動かなくっても、じっとしていても、それは叶えられるはず」
サクラコは、目に涙をためて、じっと聞いている(イレたまま)。

「さっきサクラコの話してた、オナ時のストーリーって、あのときのことじゃない?」
それは、ぼくが中3、サクラコが中1のときのことだ。

「サクラコはぼくと下校したかった。でも、ぼくはいつも友達といっしょで、声をかけられない。あの日も、あとからそっと、ついてきた」
サクラコ、じっと目を閉じている。あの日を、思い出すように。
あの帰り道に、立っているように。

「友達と別れ、ぼくが一人になっても、サクラコにはぼくに声をかける勇気がない。そのまま、ぼくの家に着いちゃった。ぼくは気づいていたんだよね。だから、サクラコに、もういちど、いっしょに帰ろうって、手を差し出した。サクラコの手は、汗でびっしょりで、つないだ手がひとつになったみたいだったね」

そして、そのときとおなじように、彼女の手をにぎりしめた。彼女はつよくにぎりかえした。・・・濡れていた。

サクラコは、わき出る涙で声にならない。と同時に、ぼくを、つまりピエールを拒絶するように硬直していたアソコが柔らかく、ぼくを、つまりピエールを迎え入れてくれた。

そして涙が出尽くしたころ、声にならない声を上げて、サクラコはイッた。
「ありがとう、ヒトミくん」
6年前の夕方と、同じ笑顔だった。(ありがとう、ヒトミくん。またいっしょに帰ってね)

最後の言葉は、「でも、なんで、それが、わかったの」。

その問いに、
(あのあと、サクラコの汗のしみついた手で、ぼくもオナニーしたから)
ってことは言えない。

教訓⑩「想像力には、チカラがある」

残念、こんども出せなかったな、と思って部屋の外に出ると、もう、さっきのオジサンはいない。
そのかわり、着ていた服と、靴と、かつら。
その上に一つの、封筒。開けると一枚のカード。
そこには、「招待状」の文字。
・・・「卒業パーティーへの招待状。卒業できればね、えへへ」と書いてある。
、、えへへ、はよけいだ。

しかし、ということは、あのオジサンは、つまり・・・。

泣いても笑っても、あと、一人。行こう。もうなにも怖くない。
 
 
XII 最終編

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XI.サクラコ編2:フクザツな再会。

「初恋の人と、再会できて、うれしい。こんなカタチだけど」
初恋の人?ぼく??きょとんとしているぼくを見て、「相変わらずねー、ヒトミくん、二中のころから、ずっと」。

「二中、って、海風二中?」
「そうよ」
そういえば、どこか見覚えがあるような。

「ヒントは、名前」
チェリーさん・・・チェリーは日本語で・・・だから、サクラ・・・あ!

「わかった?」
「サクラコ?」
「ピンポン」
「うわー、久しぶりー、うれしいなぁ、いまなにやってるの?」
「なに、、、って」
あ、そうか、ソープのオネーサン、、、ぼくはそのお客。。。ヒトミ、大バカ。
サクラコは笑っているけれど。

彼女は、ぼくとおなじ中学校。海風二中ってのが、それ。ぼくが中3のときの、中1。
というより、ぼくの親友シンジの妹。
昔はあんなに子供だったのに、ってあたりまえか。だって、6年ぶり?こんなところで、こんな会いかたするなんて、うれしくって、フクザツです。
しかも、なにがどうなって、「例の女」。

「運命のいたずら、だね」
「違うよ、運命じゃないよ、ずっと前から決められていたこと」

「決められていた、って、決めた人がいるの?」
「いる。それも、ヒトミくんにとても近い人」
どうせ聞いたって、教えてくれないんだろう。ぼくのことを、ぼくがいちばん、知らない。

「それで、結局、ぼくたちはスるの?」
「しなきゃヒトミ君のミッションは、遂げられないでしょ?」
「でもなあ、サクラコとなあ、シンジのこともなあ、なんだかなあ」
「これでも、まだ迷う?」
いきなりサクラコが、スルスルって感じで、ハダカになった。

なに、その、カラダ!?
恥ずかしそうに、顔を赤らめるサクラコ。
でも隠した手を押しのけるように、盛り上がっている胸。そこから下へ流れるカラダの曲線は、ウエストに向かって急激にカーブし、くびれきった瞬間、外に向かってはじけるように、豊かな腰を描いている。
あどけなさのどこか残る顔と、このボディーは反則だ。
よし、罰を与えてやる。

「まあ、一回くらい、調子見ておくか」ぼくは、クールに言い放った。
「でもね、」サクラコ。
「わたしが相手っていうことは、ヒトミくんにとって、いいニュースではないよ」
、、、わかっている。

「わたしには、そもそも、イレられない。もしかしたら、最強、最凶の敵」
敵って口にしたわりに、やさしい目で、ぼくを見る。

「でもなんで、サクラコがその役柄をやらなければならないんだ?もっと別の出会いかたもあったはずなのに」、、、悲しいね。
「すべては、ヒトミくんのため」
ぼくのため?

「でも、その秘密は、いまはまだ話せない。でしょ?」
「・・・うん」
わかった、シよう。サクラコとなら、どんな結果が出ても、受け入れられる。

二人ハダカで、ベッドに横たわる。
「ヒトミくん、昔よくわたしの胸、触ってたよね」
「あの頃は、板みたいだったのに」

「わたし、感じてたのよ」
「子供でも感じるの?」
「もちろん!でも、ココロとカラダ、8対2くらいだけどね」

「ちょっと、はずかしいんだけど」
「なに?」
「告白。ぼくのはじめてのオナニーの主人公は、サクラコだった」
、、、はずかし。

でも、サクラコ、にっこり微笑んで、
「光栄デス。どんなストーリー?聞きたいな」
「空想の話だからね。妄想の話だからね。笑わない?」
「もちろん」

「朝、シャワーを浴びて出てきたばかり、とても気持ちのいい朝なんだ。ぼくはスッパダカで朝食の準備をしている。トーストの焼けるいいにおいがしてきた」
「あのー、なんでスッパダカで朝食なの?」
「だから、空想だって」

オナ時に、空想するだけなら、なにをやっても逮捕されない。これは、基本的オナ権だ。

「続けていい?トーストのいいにおいがしてきた。ところが、トーストって、ぴょーんと出てくるよね、で、それが、ぴょーんとぼくのピエールに命中したんだ。ピエールって、事情があって、ぼくのアレの名前なんだけど、焼きたてだから熱いわけ、わかる?」
サクラコは、別にわからなくてもいい、て顔をしている。

「そこへ、ドアを開けて入ってきたのが、サクラコ!」
サクラコは、わたしはそんなところにいたくない、って顔をしている。

「やけどをしたピエールを見て、やさしいサクラコは、すぐに冷やそうとしてくれる。
氷で冷やしたタオルで包んでくれたり、バターをぬってくれたり、その手触りったら・・・」
ぼく、はぁはぁ、言ってる。

「ヒトミくん、落ち着いて、空想の出来事ってこと、忘れないでね」
「それでも痛みは取れない。でも両手は、タオルとバターでふさがっている。さあ困った、サクラコ。真っ赤にハレたピエール、ハレてるのは、やけどのせいだけじゃないんだけどね、ぐふふぐghつgh、さあ、どうする、サクラコ!」
「ヒトミくん、目がイッてるんだけど」

「当然のように、慣れた様子で、ピエールを口の中にしまい」
「慣れてないって」
「傷を癒してくれるのは、氷でもバターでもない、人肌だ!そして傷口にサクラコの唾液がしみこみ、イタッキモチイイタッキモチイイタッキモチイチイーチイーチイーーー・・・」
ヒトミくんっヒトミくんっ、ってサクラコの声で、ぼくは正気に戻った。トランスしていたようだ。

「お口の中までは聞いたけど、その先はどうなるの?」
「どうなるのかなぁ、いつもこの辺でイッテたから」
サクラコ、本格的にあきれている。

「じゃ、わたしも告白するけど、わたしも、はじめての主人公は、ヒトミくんだったの」
「へぇ、そうだったんだ!どんな話か、教えてよ」
「中学生時代のこと。実話」
実話?

「はずかしいから、ここまで。あとはナイショ」
サクラコは、小指の先までまっかっかに赤面している。小指も赤面・・・そんなにすごいストーリーなのか?

「それって、濡れるの?」
「(赤面)どぶんどぶん」

「それで、イッたの?」
「(赤面)ずどんずどん」
知りたい、、、どんなストーリーなんだろ。

「じゃあ、そろそろスタートしようか」
と経験者の余裕で初心者に声をかけてみたのだが、そろそろスタ、のところで、
サクラコはピエールを口で捕獲していた。
あのなぁ、処女!しかも、メチャウマ。

「店長に特訓受けたの」
ぬぁにおー、あの店長!オネーサンに手をだしたことない、とか言っといて、でもサクラコこんなにぐちゅぐちゅぐちゅうまいと気持ちよくって、、、店長、さすがです。

「ちょっと待って、サクラコ、イレないと」
あべないあぶない。
「あ、そうか」
じゃもういちど、キスから。。。
そして胸に触れる。その手のひらから、彼女の緊張が伝わってくる。
プレッシャー、あるもんな。はじめてだもんな。
わけのわからない任務もあるしな。キツイよな。
あちこち触っているうちに、愛撫というよりも、マッサージになっちゃった。
サクラコが、アエギ声を上げる。

「そ、こ、きもち、い、い、ヒトミく~ん」
首が、こっている。

「やめて!痛い、ダメ、痛い」
足裏、胃のツボ。

「どーかなっちゃうぅぅ」
背中を、オイルマッサージ。

ぼくは、なにしに来たんだっけ?
まあいい、とりあえず彼女のカラダもほぐれた。すこし濡れてきたぞ。

「ちょっと練習してみよう」
サクラコが、不安そうにうなずいている。
サクラコがあおむけになって、ぼくが上になって、脚を開いて、と、ここまでは通常どおり。
でもピエールをサクラコの中に、5ミリチェックインしただけで、「うギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」。

立ち入り厳禁だ!→タッてるだけに、うぎゃぎゃぎゃははへyひふは、って場合ではない。
サクラコが、申し訳なさそうに、こっちを見上げている。

つづく

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XI.サクラコ編1:チェリーの問題。

欲求不満なんだ、ぼく。
って単刀直入なんですが、単刀を直入したいんだ、って単刀直入スパイラルですが、まあ、そうなんです。イレるには、イレている。確かに。でも、出してはいない。
モロダシの言いかたですが、ダシてはいない、ってモロダシスパイラル。

だって、「例の女」ばかりなんだもん。出しちゃいけないんだもん。
それ以外に、そういうきっかけ、ないんだもん(号泣)。
というわけで、大人っぽい対応をとることにしました。21歳。

クロートのオネーサンに、お願いしようというのです。さすがだ、ヒトミの依存心。
なにごとも経験だしね、ソープってとこもね(自己言い訳)。
ネットで思いっきり(3日徹夜)調べて、
① 怖そうじゃないところ。
② 高くはないが、安すぎず(安すぎるものには理由があるのよ、って、おかあさんの言葉、こんなタイミングで思い出して、ごめんなさい)。
③ クレジットカードで分割にできる(せこ)。

で、決めました。「大奥パート2」将軍様、どうぞ奥の奥まで(キャッチフレーズ)。
腰元プレイ、が名物だそうだ。帯持って、グルグルやって「あ~れ~」ってやつ。
ぼくはやらないけど。たぶん。

とりあえず、予約の電話。プルルルル。
「はい、毎度ありがとうございます。お客様は、将軍様。大奥でございます」
これが、決まり文句なんだろう、このオジサン。

「すいません。予約をお願いしたいんですが」
「予約でございますねー、当店は、おはじめてでございますかー?」
「はじめてのはじめて、です」

「はじめてのはじめて様、でございますねー、だいじょうぶでございますよー、はじめてのはじめて様も、当店では将軍様でございます」
将軍タイプじゃないしなあ・・・ぼく。

「どのようなタイプをご希望ですかー?」
「いつも笑顔でやさしくて、でも芯が強い人」
「あのー、結婚相手とかそういうなのじゃございませんでー」
「じゃ、テキパキと動けて、ぼくを引っぱってくれるリーダータイプの人」
「あのー、当店、運動部ではございませんでしてー、まあ広い意味の運動はやりますけどー、ぐふふ」
自分でウケてる。

「では、テキトーに選んでおきますのでー」
テキトーでもなんでもいい、「例の女」じゃなければ。
予約は、来週の月曜日。月曜日は、半額サービス。雨なら、さらに半額。

残念、当日はヌケるような(そういう意味じゃなくって)晴天。
目的地は、ベルサイユ(ソープ)とホワイトハウス(ソープ)の間にありました、大奥パート2。
「わからなかったら、お電話くださいねー」って、わかりますよ、だってピンクの天守閣の建物。。。
「あのう、すみません」

大奥の奥(ややこし)から、不機嫌そうなオジサンが出てきた。
「アンタねえ、30分遅刻だよ」

ありゃ、やっちゃったか、でも・・・そうだっけ?
「まあいいから、そこの中で待ってて」と、玄関脇の部屋を指さす。

入ってみると、小さな事務室みたいなところ。こういうとこ経験者の友達に聞いたら、
豪華な待合室があって、お酒とか出してくれて、とか聞いてたのに、えらい違いだな。。。やっぱりビギナーは、ここからスタートしなきゃならないんだ。
5分後、事務室にオジサンが入ってきて、ぼくの前に腰を下ろした。

「先週電話くれた人だね?」
「はい」

オジサン、鼻毛抜きながら、
「なんでウチ来ようと思ったの?」

理由を聞かれるとは、思っていなかったけど、
「正直に言うと、イキたいんです」
「はぁん?」
「出したいんです」
「なにを?」
「なにを、って、ネバ液、、、ですか?」
「ネバ液、って、アレのか?」
「ネバ液って、アレ、のです」

「ぶぁっかむぉーーん!シタいなんて、100年早いわっ!!!」
オジサン、ヅラづらしながらの、大激怒。縮みあがる将軍様、のはずのぼく。

「オレだってなあ、この商売25年やってるけど、一回もオネーサンに手ぇ出したこと、ねーんだぞぉ!」
そういうことじゃないんだけど、なんか言ったらまた怒られるので、あやまる。ヒトミ流。
「ごめんなさい」よわ。
「とにかく、これに記入しろ」って一枚の紙を手渡される。
名前、住所、履歴を書け、と。

こんなことまで、ビギナーはしなきゃいけないんだ、ま、しょうがない、半額の日だしな、それにしても、カラオケで得意な歌まで書くのか、、、あとで歌うのかな?

「オマエ、アホか?」
なんだ、いきなり!?

「自分の名前、間違えてるぞ」
どゆこと?
「姉小路って、どこのお公家さんだよ、バカ。お前の名前は、ウエダだろ?ボケ!」
あ、そうか、ぼくはウエダなんだぁ、って、いつから?

「あのぉ、ぼくウエダじゃないです。ほんとうに、姉小路といいます。姉小路ヒトミ。
ほら、これ」と、定期券と、クレジットカードと、AVしか借りたことのないビデオ屋さんのカードを見せたら。
「ア・ネ・コ・ウ・ジ・ヒ・ト・ミ」
って、たしかめるように読んでみて、
「あ、あ、あ、ご、ご、ご、めん、めん、めん。バイトの面接に来た高校生じゃないのね?」

ぼくは、高校生に見えるのか?それより、高校生が、こんなとこで働くのか?
「ぼくは、今日予約した、お客です。はじめてだけど(←言い訳の必要なし)」
「お客様ァ!もう、ほんとうにイジワルなお客様でございますよ、もう、どちらの貴族のおぼっちゃまかと思いましたよ、まさかこんなみすぼらしいソープに来ていただけるとも思わず、わたしとしたことが」
そのみすぼらしいソープの、半額の日に来ているのですが。

「貴族も、閣下も、殿下も、大統領も、お客様は、みなさま将軍様。大奥でございます」
もうわかったよ。

「では、上様、今日の姫を、お選びください」って言って、アルバムを持ってきた。
写真を見せてくれるらしい。

「選んどいてくれるって、言ってたのに」
「はて、そうでございましたっけ?」
すっとぼけてる。

パンジーさん。クッキーさん。ジェニファーさん。サンディーさん。
みなさんキレイなんだけど、あのこれ、写真に修正入れてません?
しかも、修正してもバレるくらい、みなさん、立派にオネーサンのような、つまり年齢が・・・のような。

「この人たち、おいくつなんですか?」
「パンジーさんは、25。クッキーさんは、26。あとの二人は、27」
もうすこし上に見えるけど・・・。

「プラス10!」
やっぱり。

「以上!」
なぬーーー!

「年上がイヤだってわけじゃないけど、ですね、あの、その、、、」
「だってお客様、リーダータイプがいいって、おっしゃってたじゃないですか」
やっぱ、覚えてるじゃん!

「サンダさん、いい人ですよ」
「サンダさん?」
「あら、間違えた。サンディーさん」
「サンダさんなんだ」
「三田秀子」
、、、普通の名前。ちなみにジェニファーは、銭田さん。

「じゃ、この人、チェリー、あ、どうしようかな、うーん、じゃ、やっぱり、うーん」
一枚、写真を隠してる。見せてくださいよー。
「チェリーさんは、3日前に入ったばかりの超新人で、しかし、ちょっと問題が、・・・見ます?」
見ます見ます。

うわあああああ、キャワイイイイイイーーー、じゃないですか!隠してるなんて、ひどい。
「実物は、もっとカワイイでございますよ」
ほんと!?

「でも、チョト、モンダイ、アルね」
なぜか、古い中国人風。
「少々の問題なら、慣れているし」
「少々じゃ、ございませんよ」

「すごい年だとか?」
「このコは、正真正銘の19歳」

「男だとか?」
「それはない」

「子連れだとか?」
「それもない」

「全身イレズミだとか」
「それもない」

「後頭部に、もうひとつ口があるとか」
「そうです」
「ギョヘー!」
「ウソです」びっくりした。

「わかりました。今日は、お代はいただきません」
ほんと?でも、それくらいの問題、ってことなんだろう。
「でも、あとで文句を言わないでくださいませね」
はーい。

ダメだったら、よそ行けばいいや、くらいの気持ちでいたのだが、ところが。
「ちょっと待っててね」とオジサンがいったん大奥の奥(お気に入り)に引っ込んでつぎに大奥の表(それほど気に入っていない)に出てきたときは、白馬を引いて現れた。

ぼくは、将軍様なので当然だ(か?)それにまたがって、大奥の奥(お気に入り)に行くのだ。そして、ある部屋の前で、「ここでございます」綱吉の間。犬でもいるのか?

ふすま柄のドア(!)を開けて、ゴタイメーン。
うひゃー、「実物はもっとかわいい」はウソじゃないよ。
にっこり笑ってるし、愛想が悪いわけでもなさそうだ。
超ラッキー!このコと、数分後には、むふふふ・・・と思ってたら、

「わたしの問題のこと、聞いてくれました?」
やっぱり、問題は存在するのだ。
でも、男ではないし、とりあえず子連れではないし、後頭部にもうひとつの口も、
いまのとこ、発見に至らず。

「わたし、セックスできないの」
へえ、そうなの、、、なぬー?!

「できるできない以前に、したことないの」
ということは?

「処女」
処女のソープ嬢!

「痛くて痛くて、入らないの。アソコが貝殻みたいにぴったり閉じてて、小指も入らないの。箸も、ボールペンも、クルマのキーも、ガリガリ君の棒も入らない」
試したのかよ。

「これまでに入れられたのは、耳かきくらい」
入れてんのかよ。

「これまでに、何人かとシようとしたんだけど、そのたびにわたし、大出血&失神→救急車」
格闘技か、事件現場。

「だから、今日もムリ」

この問題は問題だ。
こんなところまで来て、セックスできないなんて、ごはん切れのカレー屋さんだ(ちょっと違うか)、揚げ物のないトンカツ屋さんだ(ちょっと違うか)、お寺にお参りできない京都観光だ(もういいよ)。
しょうがないなって感じで、帰ろうとしたら、

「でもヒトミくんは、わたしとシなければならない」
どゆこと?
あと、なんでぼくの名前??しかも、「くん」づけ。

「だって、ヒトミくんは、わたしを乗り越えていかなければならないでしょ?これまでに、10人乗り越えてきたように」
つまりキミも・・・。

「例の女」
もう、驚かないよ。

つづく

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X.ソフィア編3:わかりあいたい。

ソフィアが、お茶したいと言う。
目的は、お茶じゃない。さっき買った、おみやげグッズをチェキラしたいのだ。

四十八手を、一枚一枚手に取りながら、「こぼれ松葉」はミーシャにあげよう、とか、3人のプレイには名前はないのかしら、とか、ああもうワンセット買っとけばよかった、とか、ぶつぶつハァハァぶつぶつハァハァ言っている。
それを観光客が、エロかおなごやねえ、と、また写真を撮っている。東京の思い出2008=ソフィア。

ぼくは、できるだけ他人のふりをして、お店にあった1ヶ月くらい前のフライデーを、へえ、あのアイドル、こんなおじさんと付きあってるんだあ、なんて見てると、、、れれれ、ソフィアがいない。

カルタは、テーブルの上に、シテみたい順にならべられたまま。
心配になって、探しに行ったら、別のテーブルにいる。しかもだれかと話しこんでる。

なにやってんだ?と思って相手の顔を確認したら、出た!神社のオネーサン。
つまり・・・!
そーっと近寄り、腕組みをして仁王立ちのぼく。
それを見て、「あ!」&「ア」

神社のオネーサン、
「今年は、平成何年だったけなあ、それがわからないと平静でいられないなあ、うぎゃつはっっはっはっはっはひーんjdk」
と、ひとりウケをぶつぶつ言いながら、店を出て行った、っていうか、逃げやがった。

残されたソフィア、
「隠してて、ごめんなさい」
いいよ、隠されるのには、慣れているから。

「ワタシは例の女」
知ってる。

「フロム東欧支部」
支部?何か所あるんだ?でも、まあいいや。

「ソフィアは、旅館って知ってる?」
「ニンジャとクノイチがセックスするところでしょ?」
またあのガイドブックか。。。まあいいや。

「ここにくる途中に、小さな旅館があった。おなじスルのなら、せっかくだから、タタミの上でシよう」
「ヒトミは、怒ってないノ?」
「ぜんぜん。それよりも、ぼくも確かめたいことがあるし。ぼくとキミはちがうけど、やっぱりおなじだ、で終わりたいし」

その小さな旅館は、大胆にも「金閣寺」という名前で、ソフィアは「ワオ、コレが世界遺産デスね」写真パチパチ撮って大騒ぎ。
ぼくはめんどくさくて、「そうだよ」って言っちゃったけど、あのガイドブックに載るのかなあ、首相、ごめんなさい。

部屋に入って、浴衣の二人。お風呂上りのソフィアは、ほのかにミルクの匂いがした。

ソフィア、フトンの上にきちんと正座をして、
「ふつつかモノなれど、よろしくオネガイモウス」
彼女の、日本語の先生は、武士か?

ぼくも正座して、「拙者こそ、お願い申す」
握手のかわりに、甘い接吻。
それでは、「いざ!」

ハダカになったソフィア。
チクビもそのまわりも淡いピンクで、白い肌とのコントラストは、まるで、ヨーグルトとピーチジャム。あまりにおいしそうだったから、食べてみた。
ソフィアは、普段より1オクターブ高い声を出した。
やっぱりおなじだ。ピーチジャムみたいな女の子に出会ったことはなかったけど、ソフィアも、やっぱりおなじなんだ。
そうだよな、これでちがったらさみしいもんな、どうしていいかわからないもんな、ソフィアの言ってたとおりだな、ありがとう。

さあ参るか、比絵衛瑠殿。そろそろ、ソフィアに院する也。
ソフィアのナカも、やっぱりあたたかい。うれしい、やっぱりあたたかい!

おたがい遠い国で生まれて、食べ物も習慣もぜんぜんちがう環境で育って、ある日偶然出会って、こうしてカラダを重ねている。どんな二人でも、ひとつになれる。
(妄想中)
人種や宗教や経済や政治や、人が争う理由には事欠かない世界だけど、セックスだけは、ワンルール。

触れば、濡れる。濡れたころには、タッている。その二つ揃えば、イレるしかない。
イレたら、動く。動いたら、気持ちいい。気持ちいいと、声が出る。
みんなおなじだ。肌の色や宗教がちがっても、みんなおなじだ。
そうか!愛だ。まったくちがうところから、愛にたどり着ける!!!
(妄想中)
争いは、ひとりひとりのモノサシがちがうから起きる。
だったら、セックスをモノサシにすればいい。
戦争をやめて、セックスを!差別をやめて、セックスを!夫婦げんかをやめて、セックスを!
さあ、みんなで、(ギブ ピース ア チャンスのメロディで)♪ワンワールド オブ セックス!ワンワールド オブ セックス!ワンワールド オブ セックス!(こんどTシャツつくろかな)ワンワールド オブ セ、、、

「あのォ、」
あ、ソフィア、ごめん、イレてるの忘れてた。
「やってみたいコトが、あるんだケド」
フトンの横に、並べられた48枚のカルタ。いいよ、そう来ると思ってたから。

「サイショは・・・コレ」
目をつぶったソフィアが指差したのは、「八ツ橋」。
なんて雅な名前のプレイなんだろ。ぼくもソフィアも、初四十八手にわくわくしている。ところが、だ。日本文化は、甘くない。

「八ツ橋」は、別冊解説書「モアベターなフィーリングのために」を読むと、「カラダは不自然だが、密着感はバツグン」と書いてある。
たしかに、あのポイントは密着はするが、比絵衛瑠殿は、骨折しそうである。江戸時代の人は、これでイケたんでしょうか?

「〆込み錦」「〆込み千鳥」「御所車」「浮橋」・・・どれも芸術点が高そうな技で、日ごろの練習が不可欠。
もちろん練習不足のぼくは息が上がってるけど、ソフィアは、それなりに楽しんでるみたい。だって、吸う息で、ハゥウハゥウって声出してるし。あと、二十五。

「押し車」は、まんま部活のトレーニング「手押し車」。
「釣瓶(つるべ)落とし」は、なんとかサンダーボムって、プロレスの必殺技。ソフィア、あたまうちまくり。

「横笛」は、ぼくがキツかった。エキベンの、横になった版、って感じで、腹筋がつりました。両足は、それまでにつってました。笑顔はなくなっていました。カルタが裏向いていくのだけが、楽しみでした。
それでも、ソフィアとチカラをあわせて、カラダをあわせて48枚めを目指すのは、幸せな気分でした。

そして、最後の一枚。
ふたりで、最後はこれにしようねって決めてた、その名も「虹の架け橋」
出会えたことの感謝と、ここまでたどり着いたよろこびを抱えて、虹のアーチのそのてっぺんで、ソフィアはイッた。フィニッシュのセリフは、「ハラショー」だった。
 
 
XI サクラコ編

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X.ソフィア編2:二人はちがう。

電車に乗って、浅草へ行った。
こういうジャパニーズなところって、ガイジンなら喜んでくれるんじゃないかなあ、って浅い考え(浅草だけに。うひゃひゃひゃひゃひゃはやはやgsdb)。
でもでも、ソフィアは大喜び。世の中、思うほど深くない。

おみやげ屋さんで、お姫様のカツラや、殿様のチョンマゲをかぶってみたり、屋台で、りんご飴食べたり、輪投げして自由の女神像ゲットしたり(これはあまり喜んでなかった)、もう子供のような大騒ぎ。

でも、いちばん喜んだのが、浮世絵のポストカード。子供のころから憧れていた、らしい。
ソフィア、なにやら、お店のおじさんにこちょこちょ耳打ちすると、おじさん、奥から小箱を持ってきた。
それを開けると、うひぁー、「強烈ノーカット浮世絵鼻血ブー」。これ、憧れ?子供のころから。。。
おじさんに、なんて言ったの?とソフィアに聞くと、「オッちゃん、キツイやつたのむデ」と言ったらしい。「ガイドブックに書いてアル」そうな。こういうところはナイス、憎いぜガイドブック。

ソフィアは、おじさんの手から、浮世絵(ノーカット)を奪い取って、浮世絵(ノーカット)の、スイートスポットを指差しながら、というよりグリグリしながら、「ココ、ココ、ハイッテマス、ハイッテマス、ハヒッテマフ」声も裏返って、ぼくのピエールを「ウタマルウタマル(あのね、一文字ちがうよ)」って握りしめている。

通りがかった観光客が、どえりゃーおもろいもん見つけたやんけ、とばかりに、写メ撮られたりして、ちょっとした東京珍名所。
そんなの関係ねーと、おみやげ屋さんのおじさんに、ソフィアさらに耳打ち。
おじさんまた別の箱を、奥から取り出してきた。
彼女に「こんどはなんて言ったの?」と聞いたら、「モアキツイやつたのむデ?」わかってます、それもガイドブックに書いてあるんでしょ。
ソフィアの国の人に、日本はどんな国だと、思われているんだろ?ヨーグルトラーメン、ノーカット浮世絵、ウタマル・・・。

それはおいといて、箱のふたを開けると、「絶倫四十八手カルタ鼻血ブーパート2」!って、
!をつけたわりに、ぼくも3/48くらいしか体位の名称も知りません。
ところが、ソフィアは、四十八手一手一手を手にとって、なめまわすように見ながら、というよりなめまわしながら、

「鳴門後ろどり、アハーン、コレ前からやってみたかったノ。でもこのポージングは、身長の低いニホン人じゃないとできないのよネ、」
はあ、そうなんですか。

「燕返し、ウフーン、このポーズすることを考えただけで、もうワタシもうワタシもう」はあ、そうなんですか。

「四十八手はモノノケだと、ワタシ思いマス。カタチとワザがつくりあげる、精神性の美学デス」
※モノノケ→モノノフ(武士のこと)

「ヒトミは、何手くらいイタシましたか?」
「0かなあ、いつも、上に乗るか乗られるかばかりだから」

「オーーーーもったいなーいデース。このセックスの奥深さこそ、日本が誇る文化デス!」
文化ねえ。よく聞いてみると、彼女が大学で専攻しているのは、日本は日本だけど、日本のセックス。

「学問のジャンルでいうと、比較文化みたいなものデス」と、ソフィア語る。
「ニホン人は古来、スバラシイ性文化をつくってきたのに、現代社会はソレを悪いものであるかのように、封印してイマス。ソレはマチガイです」と言う。

「快楽をバカにしては、イケマセン。キモチイイことはイケナイことという発想は、ムセイしていマス」
※ムセイ→ムジュン
「次世代をつくるのは、子供たちデス。子供をつくるのは、セックスデス。世の中は、激しいセックスを前提に成り立ってイマス」
なるほど。激しいかどうかは別にして、だけど。

「つまり、快楽が未来をつくりマス」
フムフム。

「ムカシのニホンは、そのことをわかってイマシタ。ニホン中に、エッチなお祭り、たくさんありマス。浮世絵には、性と芸術のユウゴウが実現してイマス。まさしくコレは、聖と生と性の3Pヤァ」
フムフム。いちいちボケてくれなくていいけど。

「ところが、イマの日本はそうじゃありマセン。快楽を、みんなハァハァ好きなのに、ウラヘウラヘと隠そうとしマス」
フムフムフムフム。

「だから、少子化なのデス」
唐突な結論。でも妙な説得力。

「日本のセックスと、キミの国のセックスと、どこがどう違うの?」
「たとえば、シテいる最中、ワタシたちは、男も声を出しマス。ウオーーーン、って」
それはなんとなくわかる。→ぼくもでるから、あ~う~、って。ちょっとだけ。

「日本の女の人、感じると、アアアァー、って息を吐くデショ?」
うん。

「ワタシたちは、ハゥウハゥウハゥウ、って息を吸うの、知っテタ?」
知らなかった。

「ワタシの国でいちばんモテるのは牛乳屋さんで、毎朝配達中に、奥さんたちとヤッちゃうの、知っテタ?」
知らなかった。

「ミルクマン、って呼ぶノ」
へえ。

「ワタシの国のバイブは、モッツアレラチーズで出来ているの、知っテタ?」
知らなかった。

「ワタシの国の新婚家庭では、朝のトーストにバターなんか塗らないで、おたがいのアソコの・・・アーんもうこれ以上言わさないデェ、って知っテタ?」
、、、知らなかった。

「では、コレまでで、ホントウの話はどれでショウ?」
クイズかよ!

「間違いがひとつありマース」
ひとつだけかよ!

「でもね、ちがってあたりまえ。オナニじゃ、ツマラナイ」
※オナニ→オナジ

「そうかなあ、ちがいばかり目立つと、さみしいんじゃないかなあ」って、ぼくの少数意見(すでに負け犬)を無視するように、
「ワタシ、すこしのあいだ、ニホンのオトコのヒトと、お付きあいシテタ。ニューヨークに留学していたコロ、相手も留学生だったノ。とてもやさしいヒト、そして、とてもつまらないヒトだった」
どういうこと?

「なんでもワタシを優先してクレテ」
それダメなの?

「いつもキレイだよって言ってクレテ」
それダメなの?アゲイン。

「セックスのトキだって、大声出すシ」
ぼくもちょっと、出ます。さっきも、言いましたが。

「ワタシはニホン人のオトコと付きあい始めたハズ、でも途中から、カレがダレだかわからなくなっちゃッタ」
よくわからないけど。なんかわかるけど。

「それじゃ、それまでにワタシが付きあってきた、やさしいオトコたちと変わらナイし。セックスもタンパクだっタし」
それじゃないの?原因。

「ウタマルも小さかっタし」
それじゃないの?原因。アゲイン。

「ムリしてあわせなくていいノ。ちがうことが、タイセツなノ。ちがうカラ、興味を持てるノ。ちがいを理解しあうことカラ、愛は生まれるノ」
愛、か。ぼくには、まだわからない。

ぼくが小さなため息をつくと、ソフィアは、
「ヒトミは、ソフィアってぼくとちがうなあって、今日ずっと思ってたデショ?」
あ、気づいてたんだ。

「ジブンとのちがいを確かめて、納得しているダケ」
ちょっと、さみしそうな顔。

あれぇ、
「さっきぼくが、ちがうが目立つとさみしいよね、って言ったら、ちがってあたりまえって、言ったじゃん。いまだって、ソフィアはちがうことがタイセツだって、言ったじゃん。それとこれと、どうなの?」
久々の、反論。でも、声小さめ。

「オナニじゃない!ヒトミは、ちがうってことが、結論。フムフム、そうかやっぱりちがうんだな、って。ワタシは、ちがうってことが、スタート」
ぼくは黙った。続きを聞きたかった。

「ヒトミが、ジブンとワタシとちがうなあ、って思うのは、そのとおりなの。ヒトミはヒトミ、ソフィアはソフィア。それは、あたりまえのこと。ヒトミもタイセツ。ワタシもタイセツ。だから、おたがいのちがいを、リスペクトするところから、始めたい。OK?」OKだよ。

「でも、ワタシタチ、ぜんぜんちがうけど、たくさん、オナニ」
どういうこと?

「ヒトミ、さっき、困ってるワタシ助けてくれたヨネ?ダレだって、困ってるヒトは、助ける。オナカすいたら、なんか食べるヨネ?ヒトミも、飼っているイヌが死ぬと、泣くデショ?」
ほんとだ、オナニだ、じゃなくて、おなじだ。

「ヒトはみんなちがう。だからこそ、わかりあいタイ。オナニだと思ったけど、やっぱりちがう、で終ったら、いちばんサミシイよ」
そうだね。わかった。ありがとう。

教訓⑨「人はちがう。だからわかりあいたい」

「もし、モッツァレラチーズのバイブ使っても、感じるとこは、オナニ」
まあそうだね。

「ミルクマンが、奥さんヤリまくっても、やっぱりダンナはカンカン」
まあそうだね。

「四十八手をマネシテモ、使用するカショは、アソコとアレ」
露骨だけど、まあそうだね。

つづく

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X.ソフィア編1:遠くから来た女の子。

日曜日。
お昼を食べようと、おなかペコペコで歩いていた、そのとき。

「ゲンキカナチンコマンは、どこデスか?」

えっ?「元気かな、チンコマン」?
と聞き返すぼくに、うなずいているガイジンの女の子。

コバルトブルーの瞳。透けるような白い肌。プラチナブロンドのボブカット。作り物のように完璧な造形。お人形さんと言うよりも、ドール。(英語で言ってるだけやんか)

そんな初対面の美女に、「チンコ」の調子を尋ねられることは、貴重な経験だ、って貴重?

「ゲンキカナチンコマンは、おいしいデスか?」
おいしい?まあねえ、ぼくは食べたこともナメたことも、ないけどね。

「口の中がドロドロデスか?飲み込まなきゃダメデスか?」
とりあえず、起きぬけに、この会話はキツイです。

「ワタシおなかすいてマス」
ぼくも、おなかすいてます、が、ドロドロは、、、ちょっと、ね。

困った顔のぼくを見て、彼女、さらに困ったようで、「イキたい場所は、ここデス」と、手に持っていたガイドブックを開けて見せる。

ロシア語?なに語?チンプンカンプン。
でも彼女の指差すところに「ゲンキカナチンコマン」らしき文字と、写真・・・あれれ、これはラーメン?!
しかも、見覚えがあるようなルックス・・・あ、わかった!これ、すぐそこにある「男のど豚骨 玄海灘一番」じゃないかなあ。

もしかして、ゲンカイナダイチバン→ゲンキカナダイチバン→ゲンキカナダイチンコバン→ゲンキカナチンコマン、ってこと?

あんな、豚骨臭で味がよくわからない/オッサンの指が、かならずスープに入っている/味玉がいつも品切れで、もともとないんじゃないのってウワサの、ラーメン屋さん、なんで外国のガイドブックに?

店の前まで連れて行ってあげて、「アリガトございました」「じゃよい旅を」って会話をしてお別れでもよかったんだけど、でもなんか下の毛、じゃなくて、後ろ髪が引かれて。
おなかもすいてたし、思い切って、

「誰かと一緒?それとも、ひとり旅?」
(ヒトミがナンパしてるよ、ヒトミがナンパだってよ、ヒトミがナンパするようになったんだ、ヒトミがナンパヒトミがナンパヒトミがナンパヒトミがナンパ)脳内他人が大騒ぎ。

「ランチ(ど豚骨だけど)付きあってもいいかな?」
(ヒトミがナンパヒトミがナンパヒトミがナンパぱんぱんぱーん)最後は、脳内花火。

「もちろんOKデス。ワタシもニッポンのウタマルと、出会いたかったカラ」
ウタマル?もしかして、それ、ウタマロ?

でも、ウタマロって、アレ的なことじゃなかったっけ?じゃないよなあ、いきなり、にしては、ぼくのピエール付近をじっと見つめてる。

彼女の名前は、ソフィア。22歳。
東欧の知らない名前の国(単にぼくの勉強不足)から来たんだって。
大学で、日本についての学問を勉強している。なるほど、だから、日本語が流暢なんだ。
でも、日本に来たのは初めてだそうだ。

「ラーメンを食べたことはあるの?」
「ワタシの国にはラーメン屋さんはないノ、だからずっと食べてみたかったノ」

「日本の食べ物は、食べたことあるの?」
「たくさんあるワ。だっていまニホンショクの大ブーム。ワタシの家族、みんなニホンショク、大好きデス」

「ソフィアは、なにが好き?」
「オイナリサン」
珍しいもの好きだな。
「キャンタマブクロに似てかわいいから」
、、、珍しい理由だな。

「オトーサンは、ジンギスカン」
それ、日本食じゃないし、たしかにラーメンもちがうけど。

「オカーサンは、ロコモコ」
それ、思いっきりちがうし。

「オネーサンは、タイ風カレー」
それ、タイ、って言ってるし。

「あと、ワタシの国で、キツネウドンはとてもポピュラー」
へえ、日本に住んでても、なかなか食べる機会ないのに。

「森にキツネがいっぱいいて、ワタシの国、とても寒いから毛皮にするから、あまった(後略)」
首相!はじめて、お便りします。日本はとても誤解されているように、思うのですが。

「ラーメンはヘルシーね」
また、誤解があるような。

「スープは、真っ白に近いベージュで」
まあ、そういうのもあるけど。

「なぜなら、ヨーグルトでできているカラで」
できていません。

「ウエに、焼いたおモチと、すき焼きがのってイテ」
本格的にちがう。

「で、味は甘酸っぱい、ハツコイの味」
徹底的にちがう。

その時点で、店の外に連れ出そうと思ったんだけど、出てきちゃった、ど豚骨。
あまりの想像していたものとの落差に、ソフィア呆然。

「これ、ラーメン、じゃないですヨネ」と言われても困るんだ、ユメを壊す(ユメか?)ようで。
でも、日本人として、真実の日本を知ってもらわないと(おおげさ)。

「これが、日本でラーメンと呼ぶものだけど」
「このエロ臭いスープは、ナニで出来ているんデスか?」

「豚骨、つまり豚の骨」
「オマエのようなどこの豚の骨ともわからんヤツに娘はやれん!の、豚の骨デスか?」

ソフィアの国ではいま、日本の時代劇が大ブームらしい。中でも、「暴れん坊将軍」。
「マツダイラは、ソウ セクスイィ」だそうだ。それはそうと、正解は、馬の骨。

おそるおそるかわいい鼻を近づけて、ソフィア、小声で、「信じられマセン」と言う。

玄海灘一番は、博多本場の味が売り物だ。東京の人でも、ちょっとね、って人がいるくらいだから、東欧の人にはね・・・。
でもせっかくだから、「ちょっと食べてみたら」とすすめると、スープをれんげで一口飲んだ。顔をしかめている。(しかめてもかわいい←ヒトミバカ)
やっぱり、口に合わないか。

ソフィア、「シャワー浴びる前のアレを、口に押し込まれたトキの味がシマス」そのたとえはいかがなものかだが、やっぱりダメなんだ。

「そう割り切れば、なかなかイケマス」
、、、わからん。ストレンジャー。イングリッシュマン イン ニューヨーク。とくに意味なし。

「おいしかったデス。ごちそうさまデシタ」
彼女、替え玉までして、小さく手を合わせた。

日本人の女の子でも、ちゃんとごちそうさまが言えないのに、やっぱりかわいいな。
おなかも一杯になって、ぶらぶら歩きながら、ソフィアに質問してみた。
ぼくと同世代のちがう国の人が、なにを考えているか、興味あったから。

「ソフィアは、将来は何になりたいの?」
「おかあさん」
そりゃまた古風な。

「ツギの世代を育てるって、ニンゲン一生の仕事だと思う」
そう考えるか。視点がちがうな。

「でも日本の勉強が、あまり役に立たないかもね」
「おかあさんになって子供が出来たら、ニホンの子守唄を歌ってアゲタイ」
日本の子守唄を聞いて、遠い国の子供が育つなんて、いいなあ。
しっかりしてるなあ。たぶん、育ってきた環境から、ちがうんだ、ぼくなんかとは。

「ぜんぜんちがうね」
ぼくがそう言うと、
「ちがうのが、あたりまえじゃナイ?」
あなたって、なんにもわかってないのネ、って顔をされた。

そんなときだ!話に夢中になってて、すれ違いざまに、ドシーン、誰かとぶつかった。
どちらかと言うと、相手が角から飛び出してきたんだけど。

ヤべッ、見るからにあまりにコワい人。もちろんぼくは、0.03秒でごめんなさい、だ。
すると、ソフィアが、
「ヒトミは、コノ人がコワいからあやまるノ?自分がヨワいからあやまるノ?」
ぼくの答えは・・・両方です。

「あやまるのは、自分が悪いときダケ。ね、そうデショ?」
と、コワい人にまで同意を求めている、おいおいおい。。。
でも、そしたらその人も「オネーチャンいいこと言うなあ」って握手して行っちゃった。

なにがなにやら、これまで知ってる女の人たち(そう多くはないですが)とも、ソフィアはまったくちがう。知らない国の街角で起きている、出来事みたいだ。

つづく