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VIII..ミカ編3:残酷な運命。

二人とも、いつでも準備OK(はぁはぁはぁはぁ)だったのだが、タイミング悪く週末の22時。
どこも満室で、ようやく1部屋空いてたのが、「ホテル銀河鉄道69」
キャッチフレーズは、「無重力?すぺーすせっくす大性交!」

目玉は、コンドーム使い放題と、ゆで卵食べ放題。
正直、気分は凹みました、二人とも、はい。
しかし、ぼくのピエールは凹みませんでした。
で、レッツゴートゥザスペースセックス!って、けっこう、気に入ってる?

部屋に入ると、お約束どおりの、蛍光&夜光塗料の宇宙壁画。
でも、ぼくらには関係ない。宇宙でも、砂漠でも、オフィスでも、することはひとつ。

抱き合う二人。そして、熱く、長い、キス。
ぼく。「おお、これが、キスだ!」
ミカ。「そうよ、あなたのキスで、わたしの人生は始まった!」
ロミオ!ジュリエット!カンイチ!オミヤ!世紀(性器じゃなくって)の恋の、始まりだ。
終わりのない始まり、永遠の恋だ。

右の手、左の手。うわくちびる、したくちびる。そして、舌。
そのすべてが、単独の意思を持つように、自分のパートナーをまさぐり引き寄せあう。

二人の距離が、限りなく近くなる。
いきなり、ロマンチックな抱擁もそこそこに、彼女がぼくのからだを滑り降りてくる。
つまり、ピエールのところに!

喜びと、驚きと、失望が、7対2対1でブレンドされた複雑な気持ちで、成り行きを見守っていると、・・・やっぱり、ピエールはお口で捕獲されました。

これがまた、なんとも、気持ちいいのです。けっこうな、テクなんです。
でも、気持ちよさが、また、悲しい。

ミカは、だれに教えてもらったんだろう。きっと、これまでの男にも、こうやってきたんだ。男たちはみんな、いまのぼくと同じ気持ちよさを、味わってきたんだ。

なんだよ。ぐすん。
恋の、痛さ、か。
恋を得た喜びは、やがて苦しみに変わるって、坂口安吾も書いてたしな。

でも、気持ちいいよ、うますぎるよ、ミカ。バカ。ミカ。
ぼくは、自分ですっぽんぽんになって、彼女をベッドに寝かせた。
彼女も、下着だけになっている。

「ぼくは、」
彼女のチクビを、右手の人差し指と中指の間にはさみながら言った。
「キミが初めての人だと、思いたい」
これは本心からだ。

いろんな女の人が、ぼくのところにやって来た。
魅力的な人ばかりだったし、学ぶことも多かった。でも、ぼくが選んだ人じゃない。

ぼくは、ミカを選んだ。1億何千万の中から、ミカを選んだ。
自分から誘った(断られ続けたけど)。好きだって、言えた(さき越されたけど)。
こんなに意思をはっきりさせたなんて、初めてだ。
だから、彼女が、初めて。そう、思っている。

でもミカは、目をエッチにトロンとさせながら、
「わたしは、いまのヒトミくんが好き。これまでもぜんぶ含めて、ヒトミくんが好き。一部じゃないの、ぜんぶ好き」

、、、やられた、ヒトミ、負けてるじゃん。
ぼくは、男のちっこさを恥じる。ケツの穴のちっこさを恥じる。見たことないけど。

ありがとう、わかったよ。ふっきれた。過去も未来も、もうどうでもいい。
ぼくは、ミカが好き、ただそれだけ、ほんとうにそれだけ、あとはいま、二人ひとつになるだけ。
ハダカになった彼女は、あどけない少女っぽさも、脱ぎ去っていた。

好き、という気持ちをセックスに表現すると、この激しさになるのだろう。ぼくのからだを、むさぼるように求めてくる。以前のぼくなら、そんな女性の変貌にビビッてしまってたんだろうが、ぼくはもう半年前のヒトミではない。

彼女の欲望を真正面から受け入れ、ぼくも硬く大きく膨らんだ欲望をぶつける。
セックスは、コミュニケーション。求め、求められて、ふたつはひとつに。
キミに、チェックイン。

ピエールを深く押し入れると、彼女のアソコが抱きしめるように包み込む。
そのチカラで、その熱で、彼女の気持ちが手に取るようにわかる。どれだけぼくを求めているか、どれだけぼくを愛しているか。幸せの喜びに満ちて、そしてそれを失う恐怖に満ちている。

そう、恐怖・・・。
彼女がイクか、ぼくがイクか。おかあさんをとるか、彼女が残るか。
どちらにしても、幸せなストーリーは、もう綴れない。

なーんて、あたまの中はブルーでも、
カラダはチョーーーーー気持ちいいから困ったもんだ。そうだ、こういうときは、
「参照→教訓①考えるな、カラダに聞け」だ。
カラダに聞いた。答えは、動け、だ。

そう言うわなあ、カラダだもん。やっぱりカラダは、快楽主義者!わかった、動こう。
あたまの中のブルーが、真っ白になるまで。

彼女、ぼくの上に乗ってきた。
そして、ピエールを包み込んだまま、激しく腰をシェイクする。
長い髪を、振り乱しながら、自分で自分の意外とええ乳、をわしづかみにしながら、あえぎ声もフルボリュームで。大胆。濃厚。発情。やっぱり、ぼくより上級者かも・・・。
って、どうもそういうことじゃないぞ、ヒトミ!

ミカが、激しく腰をシェイクし始めたのは、彼女は、自力でイこうとしている。
ぼくを、これ以上苦しませないために。
さきにイッて、自分から、身を引く覚悟を決めたんだ。彼女の気持ちが、伝わってくる。

(おかあさんを、助けてあげて。あなたに会えてよかった。わたしのことは、忘れないでね)

イヤだイヤだイヤだイヤだ!どこにも行かないで!どこへも行かせるもんか!

ぼくは、腰の動きをフルスロットルで、加速させた。彼女に追いつくように。
彼女を追い越すように。彼女よりも先にイクように。
おかあさん、ごめんなさい。
でも、わかってくれるよね。ぼくに、好きな人ができたんだ。
とってもとってもいいコなんだ。おかあさんは、喜んでくれるよね。

そういえば、セックスで、ちゃんと射精したこと、なかったな。
どんな感じな、んだ、ろ。本、かくてき、に、きもち、よく、な、ってきたぞ。
あと少し、あとすこしで、結論が、ぴゅっと出る。

さあー、ぼくがイクよ。これで、もう、ふたりを引き離すものはない。ミカと目が合った。やさしい微笑が、うなずいている。
や否や、気絶してぼくに覆いかぶさるミカ・・・イッてる。。。

突然のことに大混乱のぼく。視界に、神社のオネーサン、手には、バイブ。
アイツ、なにやったんだ!
後ろから、バイブを、ミカのオシリに突っ込んだんだ。

その刺激で、ミカが、いっきに境界を越えてしまったんだ。

「なんてことしてくれるんだあああ!」
泣きながら抗議するぼくを無視するように、スタンプカードを投げてよこす。

こっちを、見た。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
泣いている、なんで?

そしてミカを肩にかついで、部屋から出て行った。
ぼくは、ただ、ベッドに座り込んでいた。
教訓⑦「永遠なんて、ない」
 
 
IX タマキ編

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VIII.ミカ編2:天国から地獄。

そして、ついについについに、初めてのデート。

バイト代も出たので、今日はちょい高級イタリアン。
ツバサさんにつれて来てもらったところ。
ほかの女の人と来たところってどうかなあ、とは思ったけど、ほかに知らないから・・・ごめん。

でも、やっぱり、会話がはずまない彼女は、ずっと、うつむいてばかり。
ぼくは、話題もなく、話術もなく、好きな女の子ひとり楽しませることができない自分が、情けなかった。
パスタも伸びた。キャンドルの火が、今にも消えそうに、弱々しく揺れている。

(やっぱり、そういうことなんだろう、きっと)

「今日付き合ってくれたことは、とてもうれしい。今だって、ユメのようだよ。でも、もし、たぶんそうだと思うけど、あの日のことの恩返しとか考えてくれているんだったら、無理しないで。こうやって会えただけでも、ぼくは幸せだったから」
彼女は、しくしく泣き出した。

この店では、よく泣かれるな。

「そんなことない!わたしは今日の約束を、約束したときからずっと待っていた。昨日だって、夜中まで、なに着ていこうって、とっかえひっかえ服を着たり脱いだりして、やっと決まって、これでやっとヒトミくんに会えるって寝たんだけど、わたしって、バカ」
なにがバカなの?

「靴のことを考えるの、忘れてた。うちを出るとき気づいて、でももう手遅れ」
それ、かわいい靴だと思うけど。

「ほんと、失敗。さっきから靴のことばかり気になって、、、ごめんなさい」
なんだ、だから、うつむいてばかりいたんだ、ああよかった、って意味で、ちょっと笑ったら、

「ヒトミくんは、女心がぜんぜんわかってない!」
叱られた。。。

「いちばんキレイな自分を見て欲しいって気持ち、わかる?」
わかるようで、わからないようで。。。

「ごめん、でもね、ぼくには靴よりもキミなんだ」
パニクると、ヘンなことしゃべる傾向あり。ぼく。

「キミがいるから、靴があるんだ」
意味不明。

「ぼくはキミの靴を、温めてあげたいんだ」
木下藤吉郎。ますます意味不明。

「ぼくも今日靴下が、左右バラバラなんだ」
これは、事実。

ようやく彼女、くすって、笑ってくれた。

「キミを悲しませる靴なんて、脱いじゃおうよ。シンデレラだって、裸足で帰ったんだよ、って、ぼくの提案、おかしい?よね」
「すてきな提案だわ」
よかった。

「でもね、シンデレラはイヤ」
強い口調。
怒ってる?また、ぼく、余計なことを?

「わたしは今夜、12時になっても、帰りたくない」
???

「わたし、ヒトミくんと、ずっと一緒にいたい」
!!!

「わたし、ヒトミくんが好き」
ほぼ、気絶した。

遠ざかる意識の端っこで、彼女の声が響いていた。

「好き、でもそれを言うわけには・・・。もう怖がらない、わたし、ヒトミくんが好き」
「ぼくも、ぼくもだよ、ぼくもキミのこと・・・」

あ、電話だ。ケータイが、ポケットの中で、ぶるぶる振動している。
いいときなのに、ったく。。。
しかも、非通知。・・・きわめてイヤな予感、悪寒。

ごめんちょっと、と席を立って、電話に出ると、この声は・・・。
「ダメよ」
神社のオネーサン。
今回は、登場が早いですね。

「ダメよ、好きになっちゃ」
「なんでですか?人を好きになることは、すばらしいことだって、モモコさんも言ってました!」

「状況を、考えなさい。キミがすべきことは、恋じゃなくて、戦うこと」
、、、そう、だった、けど。

「女たちは、甘い恋の相手じゃなく、乗り越えなければならない存在のはず」
「でも、ミカは、」
ぼくの声をさえぎるように、

「彼女も、キミの前から消えていく女、いいえ、キミが消さなきゃいけない女」
「それは、いったい、、、」

プープープー・・・切られた。

彼女は、、、まさか、彼女が。。。
テーブルで、彼女は待っていた。よかった、消えるわけないさ。

「いま、電話があったでしょ?」
ぼくはなんとかごまかそうとして、
「うん、なんか、意味不明」
でも彼女は、
「いいえ、意味ははっきりしている。つまりわたしが、例の女だっていうこと」
キャンドルが消えた。
(暗転)


重いムードが、ぼくたちを覆っていた。なによりも重いのは、自分の気持ちだった。
天国から地獄とたとえるには、天国滞在時間が短すぎた。
ケータイが、トラウマになりそうだ。

彼女が、ぼくの誘いにつれなくし続けた理由も、わかった。彼女も、いや、彼女のほうが、もっと辛かったんだろう。すべてを抱え込んで、ひとり耐えていたんだ。ミカは、さっきからずっと、泣いている。

「参照→教訓③とにかく自分で動くのだ」
ぼくが、動くのだ。

あの神社の夜から今日まで、いろんな苦難があった(ぜんぶセックス関係だけど)。
ぼくは、強く鍛えられた
(ラッキーもあったけど。~第2話参照)。
自分の力で、乗り越えてきた
(ファンタジスタの力も借りたけど。~第5話参照)。

不可能なんてない、渡れない川なんてない、叶わないユメなんてない、止まない雨はないし、濡れないアソコなんてない。そう信じたいし、いまのぼくには、そう信じられる。

「さき越されちゃったな」
ぼくは、笑顔で言ってみた。

「ぼくは、キミが好きだ。大好きだ」
ミカが、目に1リットルくらい涙をためて、ぼくを見ている。

「ミカが、例の女だとしても、例の女がいったい何者なのかも、ぼくはどういうストーリーの中で、どういう役柄を与えているのかも、実はぼくにはわからない。ぜんぜん、わからない」
ミカは、じっと聞いている。

「ぼくはずっと、そうだった。なにが起こっているかも、だれも教えてくれなかった。
ただ言われるままに、生きてきた」
レスランには、もう誰もいない。真夜中のような、静かさだ。

「でも、いまは違う。もう、引き返さない!この気持ちを、どうすることも、できない!」

ミカが、ようやく口を開いた。
「わたしは、初めてヒトミくんに会ったときから、好きだった。昼会えたら一日幸せで、夜会えたら必ず夢に見た」
・・・うれしいな。

「ヒトミくんが、勇気を出して誘ってくれたとき、小躍りしそうになった」
「勇気を出して、って、わかった?」

ミカは、にっこり微笑んで、
(ぼくのいちばん好きな顔だ)

「だって、声が裏返ってたんだもの」
はずかし。。。

「しかも、わたしの名前間違えてるのよー、ミキさン、こ・コ・コン夜、予テイは、、、って」
あーもー、アナがあったら、入りたい、、、って、いや、そういう意味じゃなくて。

「ミキって、だれ!?」
怒ってる?ミキミキミキミキミキ・・・だれ、だっけ?

「、、、ごめんなさい」
ぼく、ちっちゃくなっちゃった、って、いや、だから、そういう意味じゃなくて。

ミカは、さっきよりおおきく微笑んで
(ぼくの、2番めに好きな顔)、

「冗談。ヒトミくんって、おもしろいね」
ホッ。
「そういうところも、好き」
ドキッ。

もうすっかり、「相思相愛の幸せなカップル最初のデート」の会話だ。よかった。

「ヒトミくんって、どんな子供だったの?」
「ふつうだと思うよ、人と較べたことないけど」

「兄弟は?」
「いない」

「ご両親は?」
「おかあさんだけ。おとうさんは、ちゃんと記憶にないんだ。手のぬくもりとか、ぼんやりした輪郭は、うっすら覚えてるんだけど、顔がのっぺらぼう」
ミカは、ぼくのぜんぶを知りたがってる。

「わたし、おかあさんに似てる?」
まったく、似てない。面影も、求めてはいない。自分でも、それは新鮮だった。
マザコン卒業、か?と言うか、マザコン、カミングアウト?

「わたしでいいの?」
「ミカがいい。ミカで、じゃなくて、ミカがいい!ぼくは、胸を張って言える」
「あ・り・が・と・う・・・」

「だから今夜、キミを、帰さない」
似合わないけど、こんなセリフ。。。言っちゃった。

「ぼくは、どんな逆境にも立ち向かえる、その覚悟で、言っている」
さあ、答えてくれ。ミカ。

「わたしも、その覚悟がなければ、ここにいない」

イタリアンレストランを出たぼくらは、まっすぐにホテルへ向かった。

つづく

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VIII.ミカ編1:ヒトミの初恋。

ミカには、ひとめぼれ、だったわけじゃない。

おおきくって、泣き出しそうな目。ちいさくって、カタチのいい鼻。かわいい口。
よく見れば、余裕で美形なんだけど、アピールに熱心なタイプじゃないようで。
でもいつか、気になるようになって。気になって気になって、しょうがなくなって。

出会ったのは、ファーストフードのアルバイト。
彼女が、いらっしゃいませ、のカウンターで、ぼくが、ハンバーガーのパテを焼いたり、ポテト揚げたりする仕事。

ミカは、頑張り屋さんだ。
若いバイトの子たち(ぼくもそうだけど)は、まじめに働くのが、バカバカしいって思ってるんじゃないかな(ぼくはそうじゃないぞ)って感じ。

社員の人の目を盗んで、どうやってラクするか、いかにサボるか、その研究にむしろ熱心だ。でも彼女は、ラクも、サボりも、興味ない。

与えられた仕事をテキパキとこなし、時間が余れば、その他のこともやろうとする。
とくにみんながイヤがって後回しにする、ゴミ出しなんかも黙々とやってしまう。

そんなときの、彼女の顔がいい。
面倒くさそうでもなく、誇るでもなく、ただ自分の目の前が、キレイになっていくことを楽しんでるようなんだ。

ミカにお疲れさまって言うと、にっこり笑って、お疲れさまって返してくれる。
彼女が、ぼくの元気になった。彼女の顔を見ない日は、1日が10日に思えた。
でもまだ、それが恋と呼ばれるものであることには、気づかなかった。

彼女について、ちいさなことが、いつも気になった。
彼女が、バイト仲間(男)と楽しげにしゃべっているだけで、イライラした。
お客さん(男)に親切なだけで、あたまにきた。ポテトの塩を、多めにかけた。
そして、ぼくは生まれてはじめての、重大な決心をした。
彼女を、誘ってみるのだ。お茶だけど。

バイトの上がりの時間が同じ日、思いきって、
「今日終わったら、お茶しない?」と言ってみた。
自分の声じゃないみたいだった。
なんどもなんども練習したのに、それ言うだけで、心拍数の針は振り切れた。

でも、
「ごめんなさい、約束があるの」
10秒で、終了。

またある日、
「つぎのお休み、渋谷でも行かない?」
「ごめん、予定が」
5秒で、KO。

男の意地で(もしくは、未練で)またまたある日、
「来月、いつでもいいんだけど、ランチってできない?」
そしたら、
「ごめよて」
それ日本語か?の1.5秒で、秒殺。

ぼくはと言えば、
「そうだよねー、来月は寒いかも知れないしねー」
えへへへへ、と、ミジメな一人笑い。。。つら。
そりゃ、鈍感なぼくだって、完璧に拒絶されていることくらいわかるよ。

たぶん、彼氏がいるんだ。そして、そいつの束縛がきついんだ。
「今日誰と口をきいた?」
「バイトの人たちと」
「なんかイヤらしいこと話したんだろ?」
「そんなことしてないわ」
「ウソつけ!このちいさなお口は、汚れているんだ。オレのハードスポンジで、掃除してやる、さあ口を開け」
「お願いします。わたしのお口に、ハードスポンジを突っ込んでください」

なんてことやってるんだああああああああああああああああ。
くやしいいいいいいいいいいいいいい。
妄想で、タッちゃった。。。ミジメなミジンコ。。。

ああ、ほんとうに好きになっちゃったんだ。
フラれたのも、それどころか、その段階にもたどりつけてないのも、わかってる。
ただ、上手に引き返す方法が、いまのところ、見つからない。

悶々としながら、いい加減あきらめないとストーカーになっちゃうな、
ってころ、その事件は起きた。

バイト終わって、てくてくと夜の街を駅へ歩いているとき、ミカと出会った。
一人じゃない。ぼくの知らない男二人と。ぐすん。
いちばんの問題は、彼女も彼らを知らないことだ。
つまり、酔っ払いサラリーマンに、からまれているみたいだ。

うわーーーーどうしよう、、、なんとかしなきゃにんとかしなきゃぬんとかしなきゃ、ってこれがうまくいくおまじないだったらいいんだけど、じゃないんだから、もう、って・・・パニック。

「ねーちゃん、意外とええ乳してるなあ」
って、おっさんサラリーマンが彼女の胸に触ろうとする。

ぼくの好きな人になにするんだよー、って怒りに震えながらも、目は胸にくぎづけ(バイトのときは、ユニフォームに隠れてるけど、ほんま、意外とええ乳や)なぜか、関西弁。

もう一人の、やや若手サラリーマンが、
→課長ばっかりずるいなあ、そや、課長が右の乳、ぼくが左の乳、でどうでっか?
→なに言うてるねん、会社は年功序列、わしが定年なってから触らんかい、
→年功序列は崩壊じゃ、会社出たらオマエは単なるおっさんやっ!
→よう言うた。今期ボーナス、50円
→それは職権乱用あんまりやあ!

なんてもめ始めたから、よし、いまだ!
大またで、一歩二歩三歩、(人から見たら、硬直しきったブリキの兵隊)。

こういうとき、どうぶちかますんだっけ?ケンカしたことなんて、ないもんなあ、たしか、「俺(漢字気分)の女に手を出すな!」とかだったような、
コミック「いまさらツッパリ男子校暗証番号は4649」で見たような。
おおきくひとつ深呼吸をして、思いっきり目と眉を、10時10分の針くらいに吊り上げて、「オイッ!オマへら!!」

、、、ちょっと失敗。

それでも、全員(含、ミカ)が一斉に振り向いた。
や否や、as soon as、ぼくは叫んだ。

「俺(漢字気分)の女に手を出すな!」
って言った、つもり、だったんだ、、、
なのに0.3秒のミュートののち、大爆笑。
あらま、ミカも笑っている。意外とええ乳も揺れている。

どうやら、ぼく、緊張のあまり、
「オラの女に手を出すなー」って叫んじゃったようなのだ。
やっちゃった、、、ってこと。
大爆笑の後は大乱闘、but、一方的。

生まれて初めて、人に殴られた。鼻血出ちゃったし、口の中も切れた。
けっこう痛いもんだな、リアルは、痛い。
これまで、人生、あんまりリアルじゃなかったもんな。
でもそんなこと、どうでもよかった。

彼女が、ごめんねとありがとうを交互に繰り返しながら、ぼくのくちびるの血を、自分のハンカチで拭いてくれている。
かなり距離はあるが、ある意味、間接キス!
しかもぼくの背中に、意外とええ乳が、むぎゅっ。

お気に入りの上着が破けたのも、それから1週間固形物が食べられなくなるのも、どうでもよかった。
くちびるの血が、このまま止まらなければいいのにと、本気で願った。

つづく

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VII.ユミ&マミ編3:ヒトミの秘密兵器。

昼の連ドラ。
同性愛の女が、兄の別れた妻(元義姉)のあたらしい夫を誘惑して、元義姉の気を引こうとする、複雑すぎてなんじゃこりゃドロドロドラマ第42話/全52話が終わって、「どっちもどっちよねー」という、二人の明快にして簡単な結論を合図にするように、彼女たち、ぼくに襲いかかって来た。

ぼくが、下着まで剥ぎ取られるまでに、10秒もかかっただろうか。
すっぽんぽんでベッドの上で正座するぼくの目の前で、一枚残った、お揃いの(!)豹柄のTバックに手をかける二人。
豹柄じゃない、、、豹だ。

ぼくのからだが、ビーチバレーのコートであるかのように、二人は激しく拾い、つなぎ、打ち、めまぐるしく入れ替わる。
ユミさんが、ぼくの左のチクビ(弱点、もしくは、ラッキーストライク)をくちびるで攻め、て、る、う、う、う、と思いながら目を閉じて、5秒後目を開くと、ありゃま、そこにはマミさん!ユミさんは、もう、ピエールのところ。
縦横無尽左右上下斜め裏表。点が線につながり面となり、快感がからだを覆う。
それはそうと。

あのー、ピエールを二人のオッパイではさむの、やめてくれませんか?
あのー、ビーチフラッグみたいに、部屋の隅っこから走りこんで、ピエール争奪戦するの、やめてくれませんか?
あのー、足の先から舌を這わせて、首筋のゴールまで競争するの、やめてくれませんか?
あのー、ピエールを舌で、メトロノームみたいに左右に揺らすの、やめてくれませんか?

「楽しいパーティーの途中だけど、」
ユミさん、「そろそろ、イレとく?」
ぼくにじゃない、マミさんに聞いてる。

おいおい、ぼくはなんだよ、って思ってるうちに・・・ピエール、ネイルアート輝く指先で、ひょいとつままれて、イントゥ!・・・ウエルカム!

もともとの、力量差×多勢に無勢。二人のファンタスチックなプレイの、単なる観客だ。
しかも、無理やり、舞台に上げられたような。しかし、受けてばかりも、いられない。

ミッション。彼女たちを、イカさなきゃならないのだ。
どうする、この1本vs2個という現実・・・あ、そうだ、ファンタジスタ!すぐ誰かに頼るとこが、ぼくらしい。

で、どこだっけ?どこだっけ?手を伸ばして、リュックの中を探してみても、、、ない!
なんだよ、ファンタジスタ、かんじんな時に!すぐ他人を責めるとこが、ぼくらしい。

かわりに手に触れたのが、硬くてちいさいもの。
このあいだ、神社のオネーサンがくれた、・・・カエルさんだ。
(困ったら、これ使いなさい)
こんなカエル、こんな状況で、役に立つとは・・・。

下→ユミさん、まん中→ぼく、上→マミさん。横から見ると、「三」の字、というか、仮装大会のサンドイッチというか、ぼくはタマゴサンドが好きなのだが、二人の柔らかで甘く匂いたつ肉体に、もみくちゃなのだ、きもちいいのだ。

とりあえず、イレてないほうのマミさんを、攻めよう。
頼りなさげな、カエル。
でもいまは、オマエが頼りだ、と、マミさんのアソコに、カエルさんイン!
1分経過・・・何も起こらない。
2分経過・・・何も、、、起こらない。
やっぱり、ダメか、ああどうしよう、と思ってた2分45秒後突然!
マミさんの動きが止まった。

ぼくもユミさんも、動きを止めて見守っていると、大きなアエギ声をあげて・・・
え?イッちゃった?

なにしたの、カエルさん?カエルさんは、ただのカエルではなかったの?

つまりこういうことだ。
縁日のお店で売っている、水槽に入れると大きくなるスポンジの動物。基本は、あれだ。

このカエルさんも、水分を吸って大きくなる。つまり、カエルさんを、アソコにイン。→濡れ液を吸って、大きくなる。→アソコの壁を刺激して、また濡れる。→そしてさらに、カエルさん、大きくなる。大きくなると同時に、カエルさんから、特殊ファイバーの触手のようなものが、無数に伸びるのだ。それが、水分を吸うことで、大きくなる。そして、壁を刺激する。→そしたら、また濡れる。→濡れ液をさらに吸って、大きくなって、刺激する。

この無限ループを、アソコの中で、カエルさんが実現していたとは!

悪く言って、ごめん。でも、どこで売ってるの、こんなの。
一人倒した。もう、一人。
ほんとうの闘いは、ここからだった。

マミさんの、思いがけない脱落を見て、ユミさんの目の色が変わった。
ぼくのマタのあいだに、からだを割り込ませて(イレたまま)、ぼくを抱え込むようにして(イレたまま)、立ち上がった(イレたまま)。
これは・・・なんと、掟破りの、逆エキベンではないかっ!

そのまま、腰のスナップをきかせるユミさん、、、
本気にさせてしまったようだ・・・日本チャンピオンを。
にしても、これって、きもちいいいいいですね、こんなことしてもらってる男って、もしかするとぼくだけ?って幸せ・・・なんて言ってる場合ではないぞ!
言ってる場合ではないのだが、防戦一方打者一巡の猛攻撃を受けながら、

どうしよう、こんなにこんなにこんなにこんなにこんなにこ(壊れそうです)
ほんとうに、きもちんこいいきもちんこいいきもちんこいい(壊れました)
(うわあ、おかあさーん、これまでなんとか、0から頑張ってきたけど、ついにダメかもしれないよー、おかあさんごめんなさい)

そのとき、ふと伸ばした右手が触れたもの、・・・ファンタジスタ!
(ありがとう、来てくれたんだね)
スイッチを、オン!すると、、、テレビがついちゃった。

あー、これ、テレビのリモコンだよー。
ちょうど、4時の時代劇の再放送が始まったとき。
すると、それまで激しく動いていたユミさんに変化が、と思う間もなく・・・イッちゃった。。。なに、この、展開。
そして、気絶していたマミさんを起こして、あわてて服を着る。

「どうしちゃったんですか?」
「もう4時になっちゃったから、イッといたの。時間ないのよねー、主婦って。晩御飯のしたくがあるの」
ユミさん、「買い物買い物、今日は、ビーフシチュー」
ユミさん、時代劇で、時刻に気がついたんだ・・・助かった。ありがとう、黄門様。

二人は、持って来たエコバッグを片手に、
「結婚したら、また、浮気しようね」って、そそくさと、出て行った。
ぼくは、すっぽんぽんのまま、タチ尽くしながら、立ち尽くしていた。


「あんたって、ほんんんと、情けないコねーーー」
神社のオネーサンだ。

「二言めには、どこなのファンタジスタ?だもん」
、、、そうだけど。

「あぶなくなると、おかーさーーん、って、べそかく」
べそはかいてないさ、かきかけてたけど。。。

「教訓⑥人に頼るな」
ぼくの悪いところ、わかってるよ。

「つぎは、いいとこ見せてよ。あなたのミッションは、
おかあさんを救うことだけじゃないんだから」
どういうこと?

もちろん答えずに、オネーサンはいなくなった。
窓から吹き込む風で、ベッドのシーツが揺れていた。
つわものどもが、夢のあと。
 
 
VIII ミカ編

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VII.ユミ&マミ編2:浮気道。

ユミさん「つぎは、街へ出て、実技。テーマ、『1日に何人と、浮気できるか?』@浅草」
「で、何人とシたんですか、お二人は」

「わたし、16人」ユミさん。
「わたしも、16人」マミさん。
、、、すごい。

ユミさん「場所がら、お年寄りが多くてねー。最高齢は84歳」
マミさん「そうなの、タタせるまでに、時間かかっちゃって。渋谷だったら、40人はいけたわね」
、、、そうですか。

「そして最後の難問、ホンモノの夫との、面接」
「夫って、って、って、ご、ご、ご主人のことですか?」
ユミさん&マミさん、「ほかにだれがいるのよ、このコ、やっぱり、ウワサどおりのヒトミくんだわ、うわっはっはっは」
・・・・・・・・。

「実際に、浮気相手とのメールを、夫に発見させるというシチュエーション。
(問)その日はダメ。主人が休みで家にいるの。お願い、会わないで。←これを読まれてしまう、というか、実際読ませてしまう。どのような言い訳をして、納得させるか、というテスト」
命がけの、荒行。この人たち、僧、か?

マミさん「わたしの答えは、こう。→二人の結婚記念日に、あなたを驚かせようと思って、素敵なドレスをオーダーしたの。真っ赤な、背中が大きく開いたデザイン。お願いしたのが、お友達なんだけど、仮縫いの日があなたのお休みと重なってしまって、ウチでやるっていうのをお断りしたの」
ウソつきなれてるな、この人。

ユミさん「わたしの答えは、こう。→これまで黙ってて、ごめんなさい。わたしには、母が二人いる。育ての母と、1歳のわたしを捨てた実の母。その母が、さいきんわたしにメールで連絡をつけてきた。会いたいと。いまさらなによ、と思う反面、会いたくないわけがない。どうして捨てたの?なぜ戻ってきたの?100時間あっても、聞ききれないくらい。
でも、母には悪いうわさが。人と会っては、お金を無心しているらしい。会いたい、お金ならあげたい、それでもうやめさせたい、でもあなたに迷惑をかけたくない」
・・・もらい泣き、、、でも、これもウソ。

二人に聞いてみた。
「どうしてそんなに、浮気するんですか?恋愛する気もないのに」
「まあ、ずいぶん素朴な質問をするのね」
と二人で顔を見合わせて、

マミさん「夫をフレッシュに保つため」
フレッシュ?

「わたしは夫を愛しているわ。でも、どんなおいしい大トロのお寿司でも、まいにちじゃ飽きるでしょ?だからたまには、ハンバーグも食べなきゃいけないの」
なんちゅう理屈だ。

ユミさん「わたしの場合は、修行かなあ」
またわけわからんことを。

「常に自分を高めて生きたい。それが、人生の究極の目的だと思う。ここまではいいかしら?」
、、、はあ。

「セックスは、普段の生活と別物、と整理しちゃってる人いるけど、それは違うと思うの。お買い物行くことも、お料理つくることも、本を読むことも、セックスすることも、同じ。だって、ぜんぶ一人のわたしがやってることだから」
はあ。

「自分を高めるためには、常に新しい価値観や自分とちがう価値観と、自分を対峙させなければならない。本を読むように、あたらしいお料理にチャレンジするように」
はあ。

「ヒトミくん、あなたもセックスからいろんなことを、学んできたはず」
はあ。

「だからわたしが、浮気を続ける理由も、わかっているはず」
、、、わからない。

パチパチパチ!マミさん、すかさず拍手。
「さすがです。哲女!そのあたりに、わたしがユミさんを追い抜けないなにかが、あるんですよね」
哲女、ねえ。

「それにしても、哲、っていう字、折ってお口に入れる、って書くのね、そんな大きいのかしら、いや~ん」
入れる、なんてどこにも書いてないけど。。。

ユミさん「まだ、あなたは若い。このまま浮気し続ければ、きっと見えてくる」
「はいっ」
二人で、固く握手しているぞ、やれやれ。

ユミさん「さて、ヒトミくん、問題です」
「全浮選の問題ですか?」

ユミさん「これは、わたしたちから、ヒトミくんへの問題。ヒトミくんも結婚後は浮気界入りするわけだし」
結婚も浮気も、予定ないです。

マミさん「WELCOME TO UWAKI-WORLD!」
歓迎してくれなくって、いいです!

ユミさん「浮気するときに、ゴムはつけるべきでしょうか?その理由も、挿入しなさい」
「うーん、つけるべきだし、理由は、やっぱり病気と妊娠じゃないでしょうか」

ユミさん「半分だけ、正解ね」
あと、なんだろ。

「それはそうなんだけど、浮気、ってポイントを見失ってるわ」
ポイント?

「子供をつくる、という視点から考えると、セックスって、体液の混ざり合いだと言える」
はあ。

「逆に言うと、体液を混ぜなければ、セックスではない」
はあ。

「ゴムをしていれば、体液は混ざらないし、セックス的には、なーんにもしていないのと同じ」
そんな。

「せいぜい唾液が混ざり合うくらいだから、万が一浮気がばれても、ごめんなさ~い、うっかりキスしちゃったの~テヘッ!って、言えるでしょう?」
、、、言えないと思いますが。。。

マミさん「わたし、その言い訳、使ったことあります。夫はわかってくれました」
、、、ったく。

「ヒトミくん、旅ってなんだと思う?」
哲女が、さらに問う。
「遠くへ行くこと、ですか」
「半分正解」
またか。

「あと半分は、そして、戻ること」
哲学やなあ、・・・ここまでは。

「帰るべき家があるから、わたしたちは、旅ができる。帰るべき家がなければ、それはもう、旅じゃない、流浪」
なんか、話のこのあと、読めてきたぞ。

「愛すべき夫、守るべき家庭があるからこそ、わたしたちは浮気ができる」
ほら、やっぱり。↑勝手な理屈。

「そう、浮気は旅!非日常への、小旅行!未知の文化との、ふれあい!」
パチパチパチ!マミさん、いちいち拍手はいいよ、さらに、立ち上がらなくていいよ。

「詳しくは、『月刊浮気道(うわきみち)12月号特集2泊3日のチン道中』を参照!」
マミさん「ハイ、読みます」
・・・ぼくは、読みません。

ユミさん「こんど旅行社と組んで、『札幌小樽白い浮気の恋人たち昼はカニ食べ放題夜は
イキ放題ツアー』ってやるんだけど、行く?」

マミさん「行く行きますイッちゃいまーす!」
ったく、もう帰ってこないでいいです。。。

つづく

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VII.ユミ&マミ編1:浮気妻選手権。

徹夜明けで、朝寝坊。
今日はとくに用事もないから、ゆっくり寝るぞー、と、まどろんでいた昼下がり。
なのに、ピエール(神社のオネーサンに、ネーミングされたぼくのアレ)の悲鳴で、目が覚めた。

なんだなんだなんだ?
下半身に目を向けると、知らない女の人が二人。
テレビを見ながら、ピエールをウキウキウォッチングしたり、もてあそんだり。
ピエールの上げる声は、悲鳴じゃない、快感に身もだえしていたのだ。ライトな男だ。

目を覚ましたぼくに気がついた一人が、

「おはよう、お寝坊さん。お友達は、もう起きてるぞ」
確かに、、、もう、タッてる。。。

眠い目をこすりながら、
「あのー、あなたたち、誰、ですか?」と、たずねると、

「わたしはユミ、30歳」と、お姉さん風の人。
170センチくらいあって、胸もドッカーン、って感じ。
巻いた髪の毛が、ゴージャスな美人。
からだにぴったりフィットした(ノーブラだ、、、)黒のニットのワンピース。
手には、エコバッグ。

「わたしはマミ、25歳」と、隣の人と並ぶと、かわいい妹タイプ。
グレーのカシミアのセーターが、やっぱり大きな胸を、やわらかく包んでいる。
手には、エコバッグ。
二人とも、買い物の途中なんだろうか?

「わたしたち、」ユミさん
「意外かもしれないけれど、例の女なの」

はあ、なるほどねえ、意外じゃないですが。
「そしてしかも、」マミさん
「浮気妻」
自己紹介で言うことかなあ。

「その辺に転がっている浮気妻じゃなくて、」
転がってるんですか?

「全日本浮気妻選手権若熟女部門ワンツーコンビ!」
そんなのがあるんだ・・・それにしても、若熟女。。。
ユミさんが優勝、マミさんが準優勝ってことらしい。すごい!・・・のか?
にしても、今回はまた厄介な「例の女」が、来ちゃったようだ。しかも、二人。

「ところで、」いちおう聞いておこう。
「その浮気妻選手権って、なんなんですか?」

ユミさん「1年にいちど開催される、浮気妻日本一を決める、まあ、アスリートで言うと、国体みたいなものかな」
国体、ですか。アスリート、ですか。

マミさん「全国参加者3万人を超える中から、予選を勝ち抜いた一流の浮気妻たちが、グランプリを目指して戦うの」
3万人!一流!グランプリ!

ユミさん「もちろん世界大会もある。INTERNATIONAL UWAKI-ZUMA CHAMPIONSHIP」
浮気妻、って国際語なんだ・・・スシ、カラオケ、ウワキヅマ。。。

「こっちは4年に1回。言ってみれば、オリンピック。来年開催なの。それに向けて、いま、あちこちパワーアップ中」
「いや~ん、ユミさん、あちこち、って、エロいぃぃ」
はぁ。。。

ユミさん「キミ、エロ主婦の、ノンキな大会だって思ってるでしょ?」
「いやあ、あ、あ、とんでも、、、」

「筆記、実技、面接。乾く暇のないハードコアサバイバル大会、それが全浮選!」
、、、略してるし。

「まず、筆記。こういうときどうするか?今年の問題は、『いつも行きつけのスーパーで、店長から誘われました。そのときとるべき行動は、つぎのどれでしょうか?』3択ね」
なんだそりゃ。

「①すぐに、ホテルに行く。
②これからいろいろ、安くしてくれるぅ?と条件を付ける。
③とりあえず、スーパーの事務所に行く。
さあ、ヒトミくん、どれ?」
ってぼく、浮気妻じゃないし、妻ですらないし。

「はやくっ!」
「②ですかねえ、せっかくだから」

「ああ、もー、がっかりするなあ。そんなセコイことじゃ、もてないぞ、大物になれないぞ、アレもおおきくならないぞ!」
ほっといてくれ。

ユミさん「浮気に、お金的な損得をからめては、なりません。かならずあとで、もめるから。正解は、」
「じゃかじゃかじゃかじゃかじゃん!」
って、マミさん、そういうの、いりませんから。

「正解は、③。今回の浮気相手は、スーパーの店長であるってことに着目しましょう。
つまり、事務所に行く。→いきなり、わたしじゃありません、すみませんやりました、出来心だったんです。と泣きわめく。→そうすると店長は、職業上の条件反射で、奥さーん、ここにも隠してるんじゃないですかぁ?ってわたしの下着に手を入れてくるはず!」
条件反射、、、入れてくるはず、、、。

「バーチャルプレイじゃない。ほんものの万引き妻になりきって、ほんものの店長に店ちょおううう、に」
ユミ、さん、白目むいちゃって、イッちゃった、です、か?

「イクわけないでしょ、おバカちん。そのくらい正解、ってこと。さあて、第2問」
まだあるのー。

「出会いサイトで知り合って、会ってみると、これがまた、まったくタイプじゃないときたもんだ。さあ、どうする、ヒトミくん!」
また、ぼくが答えるんですかあ。

「適当に、30分くらいしゃべって、帰っちゃえばいいんじゃないですか」
「ぶあっかもーん!」
なんで怒るんですか。

「浮気妻たるもの、男を好みで選んでどうする!」
武士の妻、ですか。

「タイプで選ぶ、つまり、好きなタイプを選ぶ。好きな人を選ぶ。浮気に、『好き』という言葉は禁物なの。だって、それは恋につながる。恋したらもう、浮気じゃない」
なるほど。とりあえず。

「浮気に、『好き』が混じると、浮気が濁る。わたしたちが目指すものは、純粋浮気」
純粋浮気。。。

マミさん「そう言いきれるところが、ユミさんの強いところよね。もはや、哲学」
ユミさん「ありがと。あなたの、浮気トップブリーダー理論もすばらしいわよ」
仲いいんだなあ、って場合じゃないよ、ったく。

つづく

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VI.シルビア編3:マチコとの再会。

「オマエら男は、ヒヨコだ、アメンボだ、ちょろQだ。自分一人では何にもできない、どこへも行けない、そのくせに、自分をライオンか何かのように勘違いしている」
「・・・そういうとこあるかもね」

「愚かな小動物!」
「ぼくも頑張らなきゃね」

「子羊ども!めーめー鳴いてろ!」
「めーめーめーめーめーめー」
「めーめーうるさいんだよっ、この小粒納豆!」
「あ、ごめん、うるさかった?」

シルビア様、ちょっと、マチコに戻って、
「あのねヒトミくん、さっきも言ったけど、いちいち返事してくれなくていいのよ」
「だって、キミがいろいろ話すから」

「あのねえ、これSMだから、久々の同窓会じゃないから」
「でも、SMって、攻めと守りでしょ」

「・・・あのー、ヒトミくん、もしかしたら、SMのこと、EMEとAMORIだって思ってない?」

「あ、いけね、ASEROとATTE、だったっけ?」
「それも、、、違うけど」

「えーっ、じゃあ、AKURAとOMIJI?」
彼女、ちょっと怒ったように、
「ふざけてるの?それとも、その程度の理解で、わたしのSMに参加してるの?」

「すみません。。。でも、でもだよ、SMってすばらしいコミュニケーションだと思うんだ。だって、需要と供給のバランスがちゃんととれてるし、あうんの呼吸ってあるでしょ、打てば響く、っていうか。おたがいわかりあおうとしなければ、できないよ」

マチコ、もといシルビアが、怒声を浴びせた。

「男たちへの復讐だ!そのために女王様になったのだ!これはけっして、コミュニケーションなんかじゃない!ましてや、わかりあおうとするわけがなああああい!!!」

見事な激怒。花びんが倒れて、壁の絵が落ちた。さすが。
でも、勇気をふりしぼって、言ってみた。

「ぼくには、女王様のなさってることって、」
急に敬語。こわいから。弱虫。

「わたしのほうを向いて、わたしの話を聞いて、わたしの責めを受け入れて、わたしのメッセージを受け取って、って叫んでるようにしか思えないんだ」

シルビア様、天井に亀裂が入るような声を張り上げて、
「わたしは汚らしい男どもが、心底憎らしいんだ!滅ぼしてやろうとしてるんだ!
地上から消えてなくなれ、って叫んでるんだああ!!!」

「でも、男たちは、消えてなくならない。だって気持ちいいから。幸せだから。キミが幸せにしてくれるから。キミがすてきだから。キミが必要だから。キミとわかりあいたいから。キミとつながっていたいから」

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさーーーーいっ」
シルビア様は、涙声だ。
ぼくは、容赦なく続けた(ぼくって、S?)

「SMって、おおきな愛だと思う」
「愛なんかじゃない、愛なんか、、、じゃない」

「SもMも、異常なもの。もともと、世の中に許されてなかったこと。つまりSMって、異常な存在そのものを認めないと、始まらないでしょ?すべてのセックスを肯定する、異常も正常も認める。それって、おおきな愛。違う?」
シルビア様は、わーっと泣き出した。

「SMは、すべてを肯定することだもん、いじめとは真逆のものだもん、復讐なんかにはならないよ」
シルビア様は、ぼくの胸に顔をうずめて、泣きて続けている。

「だいいち、マチコは、復讐するには、やさしすぎるいいコだよ」
シルビア様は、濃いメークを涙でドロドロにした顔を上げ、
「シャワー浴びてきていい?」と言った。

シャワールームから出てきたシルビア様は、すっかりマチコだった。
ぼくは、彼女のカラダをおおっているバスタオルをはずした。

顔やからだに十数個付いていたピアスはぜんぶはずされ、例のウナギがバラをくわえたタトゥーもきれいさっぱり消えていた。「シールだったの」だそうだ。
・・・どこで買ったんだ?

あどけなさが残る素顔を赤らめて、マチコは、「電気を消して」と言った。
こころとからだを解放&開放するのが、セックスの醍醐味とするならば、復讐という呪縛から解き放たれ、シルビアという仮面を脱ぎ捨てたマチコは、その夜、最高のコンディションだったのだろう。
のびやかな長身がしなやかに動く様子は、まるで水の中を泳ぐようだ。

ぼくのからだに彼女の長い手足がからみつき、あちこち密着させてきて、、、
気持ちいいんん。なのに、つかまえようとすると、するりと手の中から逃げ出す、さすがウナギ(ごめん)。凶暴な女王様ではなく、奔放な王女。

やっとのことでつかまえて、ウナギに串を打つように、ピエールを彼女の奥深くチェックイン!
すると細面の顔が、ドキッとするほど色っぽい。
さっき感じたあどけなさは消えうせて、大人っぽい流し目が、彼女のもうひとつの顔なのか(参照→教訓②女の顔は、ひとつじゃない)。
男たちがウナギ祭りをした、ほんとうの理由を見たような気がした。

寝てしまっていたらしい。マチコが電話する声で、目が覚めた。

「はい。すみません。いまからすぐに向かいます」
ぼくと目が合うと、
「ごめん、起こしちゃったね」

そして、例のボンデージスーツの上に、トレンチコートを着て、
「隣の部屋と、間違えて来ちゃったみたい。でも会えてよかった」
ぼくも。

そして、「じゃ、ちょっと、コミュニケーションして来るね」
とにっこり微笑んで、ドアを開けた。

入れ違いに入って来たのは、おなじみ神社のオネーサン。
「今日ヒトミくんが使った技は、」
技?

「SM業界では、幻と言われているものなの」
幻?

「女王様の責めに、誠実に反応する。こころをこめて、相手を肯定する。
そうすると、SとMは、最後にはSもMもなくなって、ひとつの存在になる。
実はSとMは対極じゃない、表裏一体のもの。その境地にたどり着いた二人は、神と呼ばれる。でも、快感のあまり、頭がヘンになることもあるの。
だから危険な禁じ手として、封印されてきた」

禁じ手?封印?

「その名は、言葉責めに対して、こころ返し!」
こころ返し、か。いい名前じゃないか。

「教訓⑤すべてを肯定してみよう」
「はい」

「まぐれだろうけどね、まぐれを引き当てられるのも、実力だから。
・・・伸びたね、ヒトミ」
あれ、おねーさん、涙ぐんでる。

「あら、スタンプが5個たまったね。じゃあこれあげましょう」
もらったのは、1センチくらいの、小さなカエルの人形。

「ファンタジスタや、キミの役立たずピエールがダメなときに、使いなさい」

また、意地悪に、逆戻り。でもありがとう、頑張るよ。
さあ、もう寝よう。ぐっすり眠って、今夜は夢精だ。

 
 
VII ユミ&マミ編

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